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視聴率4%台目前の『監獄のお姫さま』、なぜ良質なサスペンスから視聴者は脱落したのか

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
視聴率4%台目前の『監獄のお姫さま』、なぜ良質なサスペンスから視聴者は脱落したのかの画像1『監獄のお姫さま』公式サイトより

 小泉今日子主演の連続テレビドラマ『監獄のお姫さま』(TBS系)の第7話が28日に放送され、平均視聴率は自己ワーストの5.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。前回から2.4ポイント急落した。インターネット上の反響を見ても、やりたい放題に見える宮藤官九郎の脚本にハマった視聴者は熱狂的に支持しているが、ついていけないと感じて視聴をやめた視聴者も少なくないことがうかがえる。

 視聴率低迷の大きな要因であると思われる“クドカンワールド”は第7話でも全開。カヨ(小泉)が、満島ひかり演じるふたばに「そんな、唐揚げの最後の1個取るみたいに」とツッコミを入れる場面は『カルテット』(TBS系)を連想させたし、朝ドラを見てふと気付いたら昼の再放送が始まったという「おばさんあるある」をNHK連続テレビ小説『ひよっこ』に出演していた菅野美穂に言わせるというお遊びもあった。台詞とはいえ、朝ドラにガッチリ出演していた女優が「怖いよねNHK。私の午前中を返して」と語るのは、さすがに笑える。

 宮藤は『ひよっこ』ネタが気に入ったらしく、服役中の回想シーンでも菅野演じる千夏に「たとえあいつが薄手の白シャツ1枚でずぶ濡れで立ってても素通りする自信あるね」と言わせた。これは、『ひよっこ』で菅野が演じた場面を下敷きにしたネタだ。

 さらに、洋子(坂井真紀)が昔追っかけをしていた舞台俳優は、北海道出身の俳優・大泉洋の名前を入れ替えた「大洋泉」。仲間の劇団員の名前も大泉洋が所属する「TEAM NACS」のメンバーをもじったものばかりで、「芸が細かい」と視聴者の間で話題になった。ただ、毎度のことではあるが、おそらくこれらのネタに深い意味はない。ネタ自体がすべっているとは思わないし、むしろおもしろいが、こうしたおふざけを快く思わない視聴者が少なくないのも仕方のないことだろう。

 第7話のストーリーは、ふたばの正体が警察にバレるかどうかが焦点となった。ふたばは名前を偽って吾郎(伊勢谷友介)の秘書として働きながら、その裏ではカヨが主導する吾郎への復讐計画に加担していたのだ。だが、ふたばはとっさに機転をきかせ、計画を事前に察知したため吾郎を護衛していたのだと言い張る。ふたばの剣幕に警察は引き下がったが、吾郎の妻・晴海(乙葉)は彼女の嘘を見抜き、吾郎がいる場所に連れて行ってほしいと迫った。一方カヨたちは、吾郎を拉致した犯人は女4人組で、同じ時期に女子刑務所に収監されていたとするテレビニュースを目にし、ふたばが裏切ったのではないかと疑い始める。その頃、千夏と2人きりになった吾郎は、拘束を解いたら本当のことを話すと彼女に迫っていた――という展開だった。

 一応簡単にあらすじを書いたが、おそらくドラマを見ていなければ何のことやらさっぱりわからないに違いない。これまではカヨたちが女子刑務所に収監されていた当時の回想がメインで、現在の状況はイスに拘束された吾郎がおばさんたちに取り囲まれている状況からまったく変化しなかった。ところが、第7話でこの状況が一変。彼女たちが物理的に3カ所に分かれるとともに、それぞれの場所で物語が動き始めた。裏切者がいるようにも見えるが、裏切ったふりをしているだけかもしれないという混沌とした状況で、先が全く読めない。彼女たちが悪者と信じる吾郎が本当に悪人なのかどうかもまだ定かではないし、彼女たちにそう吹き込んだしのぶ(夏帆)こそ嘘をついている可能性も捨てきれない。

 今なら、このドラマを「一風変わった推理ドラマ」と評しても良いと思うが、そこにたどり着く前に「意味がわからない」「ふざけている」と感じた多くの視聴者を脱落させてしまったのは残念だ。終盤であっと驚く展開を期待したい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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