従来型テレビCMの限界鮮明…広告主は効果に疑問、視聴者参加型CMで高い販売促進効果
2017年は「テレビ×ネット」をキーワードに、いくつかの局面でターニングポイントを迎えた1年だった。
まずはテレビCMの世界。象徴的な出来事は、「民間放送全国大会」(以下、民放連大会)で行われたセミナーで、スポンサーが 「テレビ×ネット」の時代を全民放テレビ局に向かって訴えたこと。多くの民放関係者にショックを与える発言だったが、実はその考え方を先取りしたトライアル的な取り組みも始まっている。今回はテレビCMの世界での「テレビ×ネット」とは何かを考えてみたい。
民放連大会
11月7日、東京・港区で民放連大会が開かれた。そのシンポジウム「ネット広告ビジネスの現状と民放テレビ局の将来」では、広告主2社がパネリストとして登壇し、テレビの媒体価値測定の方法について多くの注文を付けた。
1社目はダイキン工業。「テレビは若年層に届かなくなった」「テレビ広告を信用しない視聴者が増えた」「従来のマス広告では効果が疑問」など厳しい言葉を並べた。同社は視聴率だけではなく、自力で各種データも集めており、独自に広告効果を測定し始めているという。
実は同社には広告宣伝部はなく、総務部のなかに広告宣伝担当グループが置かれている。その意味では、テレビCMの出稿社としては決して先端を行く企業とはいえない。それでも「従来の“義理・人情・根性・酒の量の営業”の時代は終わった。“データ武装”の時代だ」と明言している。会場の爆笑を誘う発言だが、よく聞くと時代の変化を撃つ辛辣な内容といえよう。
2社目はライオン。同業者としてはP&Gや花王などが先進的で、どちらかというと同社のテレビCM出稿姿勢は保守的と位置付けられていた。ところがこの秋、同社は広告宣伝部をコミュニケーション・デザイン部に組織変更し、考え方を大きく変えていた。
同社は過去10年でテレビCMの割合を84%から75%に下げ、ウェブ広告を16%に引き上げている。「視聴率は今のままでは駄目」として、テレビやウェブなど各種メディアを駆使して、横断的にCMを設計する時代になったと語った。さらにテレビCMはどんな気分で見られているか、購買行動とどう結びついているか、広告効果をより精密に測る時代になっているというのである。