従来型テレビCMの限界鮮明…広告主は効果に疑問、視聴者参加型CMで高い販売促進効果
今後の可能性
一般社団法人 全日本シーエム放送連盟は、テレビ・ラジオCMの質的向上を目的に、日本最大級の広告賞「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」を設けている。今年は57回目となったが、HAROiD社が手掛けた「INTERACTIVE LiVE CM」が「メディアクリエイティブ部門」でゴールドを受賞した。業界内でも双方向CMの可能性は大いに認められたのである。
ただし現状では、全国放送で百万単位のアクセスのある双方向CMは、開発や運用でコストがかかる。費用対効果という意味で、多くの商品にとって効果的か否かは微妙なようだ。それでもシステムは一旦開発すれば、次以降はマイナーチェンジで対応でき、開発費は逓減する。ITの進化も目覚ましいものがあるので、運用コストも次第に下がっていくだろう。現状のコスト問題は、決定的な障害とはならないだろう。
AIDMA(Attention:認知~Interest:興味~Desire:欲求~Memory:記憶~Action:購入)や、AISAS(Attention:認知~Interest:興味~Search:検索~Action:購入~Share:シェア)などの消費者行動理論がある。最近はこのAISASに対して「DUAL AISAS」という発想もあるようだが、いずれにしても双方向CMのように広告に参加してもらうことで、視聴者の関与度が上がり、I(興味・関心)の次のステップとしてのS(検索)やA(購入)に行く確率が上がる。「DUAL AISAS」では、AISAS以外にISAS(I:共感~S:シェア~A:受容~S:拡散)がいわれているが、こちらでも参加型になることで共感・需要・拡散は高まる可能性がある。
広告主は関与・購入につながる広告効果の高いコミュニケーション・デザインを求めている。そこから出発すると、「テレビ×ネット」を駆使した新たな広告が開発されて行くのは間違いない。知恵と工夫で今後新たなCMが増えて行った時、今年はその第一歩を踏み出した年だったと位置付けられるだろう。
(文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表)