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鈴木祐司「メディアの今、そして次世代」

従来型テレビCMの限界鮮明…広告主は効果に疑問、視聴者参加型CMで高い販売促進効果

文=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表

双方向CM

 こうした広告主の声を反映したテレビCMが、今年放送されていた。HAROiD社が「キリン 氷結」で行った「INTERACTIVE LiVE CM」である。視聴者がスマートフォン(スマホ)から送信したデータを瞬時に集計してCMの内容に反映させる仕組みで、視聴者がCMの映像内容に直接参加できる双方向CMだ。

 例えば60秒のCM中に視聴者がスマホをタップすることで、ダチョウ俱楽部の上島竜兵が乗る氷が割れ、水中に突き落とされるCMがあった。スマホを団扇のように仰ぐことで風を起こし、平野ノラを吹き飛ばす視聴者参加型もあった。スマホのジャイロセンサーを活用した仕組みである。さらにタップすることで波瑠に近づいていく「だるまさんが転んだ」を楽しむCMもあった。いずれも百万人を超える参加者があったという。

 これらのCMの参加者には、抽選や先着順でクーポンのデータをスマホに送る仕掛けになっていた。当選者はコンビニエンスストアで実際のクーポン券に代え、商品をタダで入手できる。放送からネット、そして店頭に人々を誘導する「O2O2O(Onair to Online to Offline)」が、初めて実現したCMといえよう。

従来型テレビCMの限界鮮明…広告主は効果に疑問、視聴者参加型CMで高い販売促進効果の画像1HAROiDプレスリリース

O2O2Oの効果

 このCMにより、スポンサーは効率的にマスプロモーションを実施すると同時に、販売促進支援も達成している。まずテレビCMで数百万から千数百万の人々に商品の認知を進める。ここまでは従来のCMと同じだが、これまではCMを見てもらい、商品について興味関心を持ってもらうことはできても、その先の商品の検索やメーカーのHPアクセスには容易につながらなかった。

 ところが今回、CM内のゲームに参加してもらうことで、状況は大きく好転した。まずCMへの関与度が高いため、商品の記憶が定着し、欲しいという気持ちも従来以上に高められた。さらにクーポンを入手し無料で商品をゲットした人たちは、商品のファンになる可能性が高い。実際にSNSで商品の評判を拡散した参加者がたくさんいたようだ。

 ここでメーカーは、予期せぬ効果を得たという。CMに新奇性と娯楽性が加わったことで、CM部分の視聴率が下落するという従来の傾向が緩和された点だ。やはり面白ければ、CMもより見られるようになるということだ。

 そしてもっと重要なのは、メーカーにとって流通対策につながった点だ。従来は小売りの棚に商品を置いてもらうには、「GRP(延視聴率)」で一定の数字が必要だった。ところが今回は、商品が万単位で配られることになったために、コンビニなどは自動的に該当商品を棚に並べてくれた。必ずしも大量のCMを打たなくても営業対策が実現したわけで、スピードと費用対効果を一挙に達成したといえそうだ。

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

鈴木祐司/メディアアナリスト、次世代メディア研究所代表

東京大学文学部卒業後にNHK入局。ドキュメンタリー番組などの制作の後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。メディアの送り手・コンテンツ・受け手がどう変化していくのかを取材・分析。特に既存メディアと新興メディアがどう連携していくのかに関心を持つ。代表作にテレビ60周年特集「1000人が考えるテレビ ミライ」、放送記念日特集「テレビ 60年目の問いかけ」など。オンラインフォーラムやヤフー個人でも発信中。
次世代メディア研究所のHP

Twitter:@ysgenko

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