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ソーシャルゲーム・プロバイダーのトップ、gumi・國光宏尚社長インタビュー

突破力のグリー、戦略のDeNAにみるゲーム業界のミライ

構成=國貞文隆
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突破力のグリー、戦略のDeNAにみるゲーム業界のミライの画像1今回取材した國光宏尚氏が社長を務める
gumiのHPより。

 ここ数年、グリーやディー・エヌ・エー(mobage)などが牽引するソーシャルゲーム市場の急成長は、誰もが目を見張るところである。

 そのグリーのビジネスパートナーであり、コンテンツ(ゲーム)プロバイダーとしてトップクラスの地位を築いている企業が、gumi(グミ)だ。

 2007年の創業から5年という短期間で、なぜgumiは急成長を遂げたのか?

 その秘密に加え、ソーシャルゲーム業界で、

 「今、何が起こっているのか?」
 「これから、どのような進化をしていくのか?

などについて、業界を知り尽くす國光宏尚・gumi社長に話を聞いた。

――早速ですが、ソーシャルゲーム業界は、グリーとディー・エヌ・エーが熾烈なライバル争いを繰り広げています。そんな中で、現在gumiは、グリーとビジネスパートナーを組まれていますが、その理由はなんでしょうか?

國光宏尚氏(以下、國光) グリーを選んだのは、ソーシャルゲーム業界の中で私たちが最初でした。あくまでビジネスとはいえ人間関係が重要なので、最終的には信頼できるかが重要だと思いました。グリーもディー・エヌ・エーもユーザー数はほぼ同じ。土俵が同じなら、良いコンテンツをつくれば、ユーザーも評価してくれるという思いもありました。

 グリーのすごいところは、トップが一旦腑に落ちて納得して、コレだと思ったら一気に会社が動くところです。最初はほとんどディー・エヌ・エーの後塵を拝していましたが、どうにかして追いついてしまう。完全に選択と集中ができていると思います。社内のオペレーションがよく、実行能力も非常に高いのです。

 その意味では、グリーは松下幸之助さん時代のパナソニックのよう。決めたことをすごい突破力で実行していく。ディー・エヌ・エーはコンサルタントのような会社で、きちんと戦略を練って考えている。創業者の南部智子さんが勤めていたマッキンゼーのカルチャーのようなものがあるのかなと思います。

 モバイルの世界は、まだ「これが絶対の成功モデルだ」というものがありません。まだわからないことがたくさんあり、可能性もたくさんある。近い将来何かが出てきたときでも、この2社は果敢に乗り出していくと思います。

――そもそも、gumiはどうやってソーシャルゲームにたどりついたのですか?

國光 最初に会社をつくったときは、携帯版のフェイスブックをつくるつもりでした。当時はマイスペースが伸びていた時期で、フェイスブックはまだ小さかったのですが、そのころからフェイスブックはブレイクすると私は予測していました。

 それまでのインターネットはウェブサイトが中心。グーグルもウェブサイトを検索するものです。それがソーシャルネットワークの登場で、とくにフェイスブック以降は、人が中心になってきた。

 「人がどのようなウェブサイトを見ているのか?」
 「どういうものを買っているのか?」
 「そして、どう繋がっているのか?」

 つまり、「人が中心」というところにウェブが完全に置き変わったのです。

 その転換点の中で、まさに今がチャンス。フェイスブックは最初PC向けだったので、携帯版のフェイスブックをつくればイケるのではないかと思いました。

 今オープン化している会社は多いですが、当社は、ミクシィがオープン化する1 年前、グリーがオープン化する2 年前、フェイスブックのモバイルがオープン化する3年前に、すでにオープン化していました。

 当時、私としてはモバイル版ソーシャルネットワークを世界で初めてつくったということで、スティーブ・ジョブズになったような気持ちでした(笑)。オープン化すれば反響もすごいと思っていた。

 ところが実際には、オープン化しても、誰も反応してくれませんでした。せっかくオープン化したのに、誰もコンテンツをつくってくれない。そこで、仕方がなく、自分たちで自分たちのサイト向けのコンテンツをつくるようになったのです。

 会社は創業当初5 人くらいだったのですが、2年くらいは鳴かず飛ばず。そのうちミクシィがオープン化したので、つくっていたコンテンツを提供し始めたのです。それでもミクシィがオープン化するというニュースを聞いたときは、絶望的な気分になりました。これで最初のプラットフォーム戦略は崩れたわけですから。

 しかし、ミクシィとのお付き合いが始まってから、ユーザー数は急増。モバイル向けのコンテンツをつくっている会社は少なかったこともあり、大きな先行者利得を得ることになりました。そこからグリー、ディー・エヌ・エーとお付き合いするようになるのです。

映像会社からの脱皮

――gumiは07年の創業から5年目を迎えました、起業のきっかけはなんだったのでしょうか?

國光 私は、もともと海外が長くて、中国・上海の大学(復旦大学)に入り、そのあとバックパッカーとして中国国内、インド、チベット、中南米、東南アジアなど30カ国を足かけ2年放浪しました。最後はロサンゼルスの大学(Santa Monica College)に入って、結局10年くらい海外にいました。29歳のときに帰国にして、映画・TVドラマのプロデュースを行うアットムービーという映像会社に、取締役として参画しました。

 その会社のポリシーは、「制作会社と呼ばせない」というもの。TV局の下請け的仕事という慣習から脱するためでした。「言われた仕事は断る」「自分たち発の企画しかやらない」。おそらくTV局からは生意気に映ったでしょうが、先方がアイデアに困るとうちに相談にくるようになり、映画、TV局ともに幅広く仕事をしていました。

 自分たちの考えた企画をプロデュースするからには、入口から出口までやりたい。そこで、役者の選定から、資金集め、現場の仕切り、最終的な宣伝、配給まですべてに係わっていました。

 その過程で、映像の派生としてネットやモバイルとの絡みが出てきました。携帯端末向けのオリジナルドラマや動画にコメントをキャプチャーで入れたり、当時ネット系の新しいと言われる領域で、さまざまな試みを行っていました。

 しかし、映像業界は歴史が古く、保守的な体質でした。ネットでの新しい試みを大きなビジネスとして動かそうとするとストップがかかる。説得はしたのですが、どうしてもその壁を乗り越えられなかった。そこで、やりたいことができなのなら、独立しようということになったのです。

細部へのこだわりを武器に世界へ

――創業はスムーズに運んだのでしょうか?

國光 資金は、自己資金のほかにアットムービーと、ウノウ(その後、ジンガが買収)と同社社長の山田進太郎氏から出資してもらい、会社を立ち上げました。

 山田氏との縁は大きく事業に影響しています。そもそも私は、ブログの世界でちょっとした有名人でした。「映画プロデュース会社:取締役の妄想日記」というようなかたちでブログを書いていたのですが、シリコンバレーの最先端のニュースなどを自分のコメントとともに書きまくっていたのです。

 当時はそうした情報を載せているブログは少なかった。そこで、自然と海外のIT情報に興味をもつ人たちと知り合いになりました。連絡を取り合って、ごはんでも食べようと。その中に、同じくブログの世界で有名人だった山田氏がいたのです。山田氏の会社は高い技術力を持っていた。こちらにはエンタメのノウハウがある。そこで、一緒に何かやったら面白いということで出資をしてもらったのです。

――創業から5年たち、ソーシャルゲームも成熟期を迎えつつありますが、将来の戦略をどのように考えていますか?

國光 海外に目を向けています。現在、韓国、中国、シンガポール、パリ、米国に拠点を持っています。日本国内の社員数は350人ですが、海外にも合わせて150人います。

 優秀なクリエイターはグローバルレベルで人手不足なので、私たちも海外で優秀な人材を確保する競争をしなければならない。そこからどんどん新しいイノベーションをつくっていきたい。私たちは映像出身だけに、クリエイターにとって働きやすい会社です。ネットの世界で、コンテンツづくりに長けた人たちは意外と少ない。私たちのソーシャルゲームも、細部にこだわってつくっているからこそ、ユーザーの支持を得られているのだと思います。

 スマートフォンが世界を席巻する中、私たちのビジネスも世界が相手なのです。日本発で世界中の人たちに愛されるコンテンツをつくりだし、世界No.1を獲りたいと思います。
(構成=國貞文隆)

<目次>
【1】突破力のグリー、戦略のDeNAにみるゲーム業界のミライ
【2】お客様も社内会議に参加!? オイシックス流ユニーク経営術
【3】マック、ナイキ…ファンと売上を増やす新しいサイトの仕組みとは?

國貞文隆

國貞文隆

1971年生まれ。学習院大学経済学部卒業後、東洋経済新報社記者を経て、コンデナスト・ジャパンへ。『GQ』の編集者としてビジネス・政治記事等を担当300人以上の経営者を取材した経験がある。。明治、大正、昭和の実業家や企業の歴史にも詳しい。主な著書は『慶應の人脈力』『やはり、肉好きな男は出世する ニッポンの社長生態学』『社長の勉強法』『カリスマ社長の大失敗』など。

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