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米豪産牛肉に発がん性か 残留ホルモン剤が原因 日豪EPA批准で来年から輸入急増

文=小倉正行/国会議員政策秘書、ライター
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 豪州産牛肉の関税が来年4月1日から10%引き下げられれば、当然日本市場に流入する価格も10%下がることになり、競合する日本のホルスタイン(雄)牛肉も価格が下落し、日本の畜産酪農家の経営を直撃することになる。現在でも酪農家の離農増加により日本の乳製品、特にバターが不足状態になっているが、今回のEPAによりさらに深刻な事態となることが予想される。

 さらに、日本政府は「豪州産牛肉はセーフガード措置があるから、輸入の急増を防げる」と説明しているが、日本の牛丼向けなどに使われる豪州産くず肉は、このセーフガード措置の対象外である。さらに、この豪州産くず肉の関税引き下げ率は初年度に40%にも上り、割当数量は10年後には現在の輸入量を3000トン上回る2万1000トンにも上る。

●わずか3日間の国会審議で批准

 このように日本の畜産酪農に深刻な打撃を与える日豪EPAが、なぜやすやすと国会を通過してしまったのだろうか。国会決議は、重要品目が除外又は再協議の対象となるよう、政府一体となって全力を挙げて交渉するとなっているが、前述のとおり重要品目として牛肉も明記されており、牛肉も交渉対象から除外されなければ国会決議違反となる。

 今年4月3日、日本消防会館で「日豪EPA交渉にかかる国会決議実現に向けた緊急全国要請集会」が開催された。ここでは、全国農業協同組合中央会(全中)の飛田稔章副会長が「決議には、『除外』とある。文字通り除外で、関税削減も認められない。ぜひ決議を実現してほしい」と代表要請した。これに対して、森山裕自民党農水貿易対策委員長は、「自民党での決議は、総務会でも了承をもらったため、党としての最高の決議。この決議を元に、衆参の農林水産委員会でも決議された。しっかり守り抜くのは当然のことで、政治の信頼に関わる」と演説。西川公也農林水産大臣は、当時は自民党TPP対策委員長であったが、「安倍首相にみんなの気持ちはこうだと伝え、判断してもらうことになる。私も皆さんと一緒に、なんとしても勝ち取るべく、努力していく」と演説した。

 このように政府・与党は、農業関係者に対しては守り抜くと言う一方、国会では衆議院2日・参議院1日の短期間審議で強引に批准を行い、民主党も賛成に回ったのである。

●米豪牛肉に発がん性か

  今回の日豪EPAで豪州産牛肉やくず肉の輸入が増えることは確実であるが、注意されるべきは、日本に輸出されている豪州産牛肉が例外なく成長促進ホルモン剤に汚染されているという点である。豪州では1979年から牛に同剤を埋め込む方法で使用されている。今年4月7日にはロシア農業監督庁が、豪州産牛肉から成長促進ホルモン剤トレンボロンが再三検出されたことから、豪州産牛肉の輸入禁止を発表した。また、EUは同剤含有の牛肉輸入を禁止しているため、豪州政府はEU向けの牛肉については同剤使用を禁止している。

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