スポーツをする子どもにも大人にも「重大なケガ」が増えている“恐ろしい理由”
故障を減らすために摂るべき栄養素
それはともかくとして、関節などの故障を未然に防ぐためには、ある特定の栄養素をきちんと継続的に摂取しておかなければなりません。それは「ムコ多糖類」と呼ばれるもので、ヒアルロン酸やコンドロイチンなどは、このムコ多糖類の一種です。ムコ多糖類を多く含んでいるのは、なんといっても魚の目玉の周りです。ドロドロ、ネバネバとした部分がムコ多糖類です。ほかにも、スッポンや魚の煮こごリ、鶏がら、豚足などにも多く含まれ、植物性のものであれば、山芋、オクラ、納豆などや、昆布、わかめ、もずく、といった海藻類に含まれるヌメリ成分も、ムコ多糖類の範疇に入れられています。
食事で、このようなものをたっぷり食べていれば、関節の潤滑液が不足することもなく、したがって関節のケガも少なくなるということになります。最近の子供たちの食事内容を見ると、ムコ多糖類が少ないことがわかります。
食べものでもうひとつ重要なのは、クロムというミネラルです。クロムに関しては以前、糖尿病の話を書いた時に出てきましたので、憶えておいでの方もいらっしゃるかと思います。その時の話は、クロムが細胞膜のドアのカギを開ける役割を果たしてくれて初めて、ブドウ糖が細胞内に入れる。だから、クロムが不足するような食事内容だと、必然的にブドウ糖が細胞内に入れる確率が低くなり、血液中にブドウ糖がダブつくような状態となり、結果的に糖尿病に近づくことになる、ということでした。
クロムの体の中での働きはそれだけではなく、インスリンと協力関係を構築して、脂肪の代謝や、たんぱく質の代謝にもかかわっています。血中のコレステロールの値を下げ、体の脂肪を減らす役割を果たし、筋肉を発達させることに関与しているのです。まさに八面六臂の大活躍といったところです。
これは実際にアメリカで行われた実験によって証明されたことですが、クロムの摂取量が理想に近いと筋肉がよく発達する、ということがわかっています。ただし、理想の値よりも多く摂ったからといって、どんどん筋肉が発達するわけではありません。だから、やたらとサプリメントを摂取すればいいということではないのです。
そしてクロムには大敵がいます。それは砂糖です。砂糖を取ってしまうとクロムが浪費され、体外に排泄されてしまうのです。だから筆者は、料理に砂糖を入れてはいけないということを厳しくお伝えしているわけです。
クロムの体内での作用については未解明の部分も多く、今後の研究を待たなければなりませんが、現在わかっていることだけでも、私たちの生活や子供たちの健康に役立つことがたくさんあると思います。クロムを多く含む食品は、未精製の米をはじめとする穀物、同じく未精製の大豆をはじめとする豆類、あおさやひじき、昆布などの海藻類、そばやアマランスなどの擬穀物類、アーモンドやかぼちゃの種などのナッツ類、種子類にも比較的多く含まれています。また牡蠣、エビ、うなぎ、鯖などの魚介類にも含まれています。
子どもがスポーツを習っているお母様方にぜひ理解いただきたいのは、料理に砂糖を使わないこと。上記のようなムコ多糖類やクロムを豊富に含む良質な食材を選び、最適な料理法でお食事を作って、食べさせてあげることです。その時に参考にしていただきたいのが「オプティマルフードピラミッド」です。オプティマルフードピラミッドのオプティマルは「最適」という意味ですから。これは子供たちにお食事をつくって食べさせてあげているお母様だけでなく、パフォーマンスを上げたい、元気でいたい、自分の才能を発揮したいと考えているすべての方にも、実践していただきたいと思います。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)