航空会社のマイレージプログラムなどの活用方法に関する情報提供を行うアメリカ企業「リワードエキスパート」が2月、数千件のレビューに基づき、高評価のレストランが多い国際空港ランキング(アメリカの空港を除く)を発表した。このランキングで、日本の成田国際空港(以下、成田空港)が堂々の第1位に選ばれ、話題となっている。
調査の評価基準は「質」「値段」「多様性」。成田空港は5点満点中4.77点という高得点を獲得し、第2位以下に大差をつけて首位となったのだが、その理由は、手頃な値段で質の高い食事を楽しめる素晴らしい日本食レストランが多いからとのこと。
ちなみに第1位の成田空港に続くランキングは以下のとおりで、欧州圏の空港よりも、アジア圏の空港の評価が高いようだ。
・第2位:台湾桃園国際空港(台湾)
・第3位:香港国際空港(中国)
・第4位:チャンギ国際空港(シンガポール)
・第5位:アムステルダム・スキポール国際空港(オランダ)
・第6位:ガトウィック空港(イギリス)
・第7位:シドニー国際空港(オーストラリア)
・第8位:アドルフォ・スアレス・マドリード・バラハス空港(スペイン)
・第9位:ミュンヘン国際空港(ドイツ)
・第10位:ヒースロー国際空港(イギリス)
そんなアジア圏のなかでもダントツでトップとなった成田空港だが、確かにレストラン街は充実のラインナップ。昨今では飛行機の利用が目的でなくとも、食事などを楽しむというレジャー目的で成田空港を訪れるカップルや家族連れも少なくないという。そこで、世界一に輝いた成田空港のいくつかの人気飲食店に足を運び、どのような点が評価されているのかを客観的にレポートしてみたい。
目の前のカウンターで職人が握る本格店「寿司田」
成田空港第2ターミナルに到着した筆者は、レストランやショップの集まる4階へ。最初に訪れたのは、今回のランキングのなかでもおすすめ店として紹介されていた「寿司田 成田空港店」。「寿司田」は銀座や赤坂などにも店舗を構える高級寿司店であり、自然と期待が高まる。
店内は奥に細いつくりになっており、まっすぐ延びたカウンター内で職人が寿司を握る。やはり寿司を握るその姿自体が、ある種のエンターテインメントとして外国人観光客などから人気なのだろう。
カウンターに着席し、ランチメニューのなかでも特に人気だというセット「真珠」(1400円、税別)を注文した後、店内を見渡す。平日の午後ということもあり店内は比較的空いている。ここ第2ターミナルには「寿司田」を含め4軒の寿司店があるが、メニューや店舗形態や客単価などでそれぞれ個性を出し、棲み分けをしているようだ。
壁に貼られたメニューを眺め、空港で「白子」や「鯛の酒盗」まで出しているのか、などと感心していると、中トロやタイなどのネタがのったセット「真珠」が到着。
さっそく寿司を実食したところ、瑞々しくほんのり甘いネタと、口の中でホロリとほどけるシャリが絶妙で、寿司に慣れ親しんでいない外国人観光客でもおいしいと感じるであろうクオリティだった。セットの味噌汁や茶碗蒸しも美味である。
また、お茶を飲み干すと、店員がちょうどいいタイミングで「お茶お注ぎしましょうか?」と声をかけてくれた。寿司の味だけでなく、店員の接客やオペレーションのスムーズさまで含め、まさに“いいお店”のそれではないか。職人が目の前で握った中トロや鯛などの寿司を1500円程度で食べられることを考えれば、これは確かに、飛行機に搭乗予定のない日本人でも来訪の価値があるといえそうだ。
飛行機を眺めながらサクサクの天ぷらを堪能「天亭」
次に訪れたのは、同じ第2ターミナル内の天ぷら店「天亭 成田国際空港第2T店」。成田空港内の天ぷら専門店はこちらのみである。
入店すると、入り口すぐのスペースに6、7席ほどのカウンターがあり、カウンター内で料理人が天ぷらを揚げている。先ほどの「寿司田」もそうだが、こういった料理人が職人技で魅せる姿は、外国人観光客にとってエンターテインメント性が高いのだろう。
注文したのは「天丼とお蕎麦の定食」(1050円、税別)。店員いわく、こちらの定食は和食の代表格といえる天ぷらと蕎麦が同時に楽しめるため、外国人人気が高いとのことだ。
ちなみに、筆者が案内されたのは窓際の席だったのだが、実はこのお店、窓の目の前に滑走路が広がっている。離着陸する飛行機を眺めながら料理に舌鼓を打てるのも、大きなウリというわけだ。
やがて、筆者のもとに料理が到着。天丼には海老、キス、ピーマン、カボチャ、ナスがのっている。海老天を口に運ぶと、衣は薄いが決して薄っぺらくはなく、サクッとした食感が心地よい。セットの蕎麦はオーソドックスではあったが、しっかりとコシがあり、「蕎麦にも妥協はしない」というお店の気概が感じられる一品だった。離着陸する飛行機を肴に本格的な天ぷらを食すというのは、なかなかオツである。
コスパの高い本格手打ちうどんが魅力「杵屋麦丸」
腹ごなしの意味も兼ねて第2ターミナルを散策後、第1ターミナルへと向かう。余談なのだが第1、第2ターミナルのどちらにも「マクドナルド」が入っており、各店舗には、欧米から来ていると思しき観光客が多く見受けられた。これは、日本人が海外に行って味噌汁の味が恋しくなるのと同じ現象なのだろうか。
最後に訪れたのは、第1ターミナル5階にある、自家製麺をウリにした讃岐きうどん店「杵屋麦丸 成田国際空港第1T店」。手打ちうどんが楽しめるようで、店先にはうどんを打つ台がある。
さっそくセルフカウンターで「ぶっかけうどん」(362円、税別)の“冷”を注文し、シンプルにネギとしょうがだけをのせて着席する。
スルッとすすると、麺はもちもちを通り越してぶりんぶりんの歯ごたえ。香川で食べる讃岐うどんと遜色なく、“本場の味”と言っても差し支えないクオリティであった。価格帯がリーズナブルなため、おのずとコストパフォーマンスが高くなるのはもちろんだが、短時間でお手軽に本格的な手打ちうどんが味わえるという点が何より魅力的である。
“日本の玄関”には“一流の台所”が備わっていた
今回、こうして成田空港のレストランを巡ってみたわけだが、やはり世界一に選ばれるだけあって、そのコストパフォーマンスの優秀さに間違いはなかった。さすがに“超高級”とまではいわないが、1000円未満や1000円台で本格的な和食を堪能できる店舗が多く、その一方で“ハズレ”の店もないように思う。そういった点が、リワードエキスパート社に高く評価されたであろうことは想像に難くない。
成田空港は“日本の玄関”であるため、空港内の飲食店は初来日の外国人観光客にとって最初に食べる“本場の和食”となる可能性が高そうだが、我が国の食文化を知ってもらううえで、料理のジャンル、価格、質が最適化されているといっていいだろう。
前述したように、飛行機を利用する予定がなくとも、レジャー目的で成田空港を訪れる客は年々増えているという。和食の魅力を再確認するという意味でも、成田空港のレストラン街には足を運ぶ価値があるかもしれない。
(文・取材=A4studio)