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かけるだけで視力が回復?「クボタメガネ」に世界が注目…近視、最悪は失明のリスク

文=佐久間翔大/A4studio
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窪田製薬 HP」より

 ネットで注目された“かけるだけで視力が回復するメガネ”をご存じだろうか。その名前は「クボタメガネ」。初期型プロトタイプが完成したと発表された昨年12月18日以来、一躍脚光を浴びることとなったこのメガネは、遠くのものがハッキリと見えなくなってしまう近視の治療・抑制を目的としたデバイス。これを1日60~90分かけるだけで近視が改善される可能性があるのだという。

 2021年後半の発売を予定しているクボタメガネは、メガネブランドではなく窪田製薬ホールディングス株式会社(以下、窪田製薬)の100%子会社であるクボタビジョン・インクが開発を行っている。

 では、どのような仕組みで近視の治療・抑制を実現させようとしているのか。なぜ製薬会社がメガネの開発・発売に取り組んでいるのか。窪田製薬の代表執行役会長、社長兼最高経営責任者である窪田良氏に話を聞いた。

本当は恐ろしい近視……失明につながる病気と合併することも

 窪田製薬は、製薬の分野で“飲むサングラス”とも言われる目の疾患に対する飲み薬の開発を行っていたという。

「体内に吸収された薬は均等に体中へ分布されてしまい、目の奥にある網膜に届けるためには過剰な量の薬を投与する必要があったため、従来の目の治療には点眼液が使われてきました。

 ですが、私たちはもともと飲み薬の成分が目だけに届く技術の開発を行っていたので、その技術を活かしてスターガルト病という遺伝性疾患の治療薬候補「エミクススタト塩酸塩」の開発に取り組んでいます。

 会社名に“製薬”とありますが、会社の目的としては創業者である私が元眼科医なので、テクノロジーにこだわらず目の治療に関する、世の中から失明をなくすためのソリューションを提供することにあります。ウェアラブル近視デバイスであるクボタメガネもそのひとつですね」(窪田氏)

 ここで気になるのが、なぜ数ある目の病気のなかでも近視に着目し、その治療・抑制に特化したデバイスとしてクボタメガネの開発に着手したのかということだ。

「外で過ごす機会が減って、スマホやパソコンの画面を近い距離で見続ける方が増えたことから、現在近視を患う方が飛躍的に増加していて、2050年には全世界の半分の人間が近視になるともいわれています。近視を若い頃に放置すると、歳を重ねてから緑内障や黄斑変性、網膜剥離、白内障といった、最悪失明に至るようなほかの目の病気に罹るリスクが高まっていくので、早期に根本的な治療を行う必要があります。

 ですからクボタメガネの現段階のターゲットとしては、子どもを想定しています。実は近視の大多数は子どもの頃に起こり、最近の研究では5、6歳から進んでいくと明らかになっているんです。

 一方、子どもの目は成長過程にあるので可塑性が高く、外からの刺激にも反応しやすいので、クボタメガネによる治療・抑制の効果が期待されます。そのため、早期発見・早期治療の観点からも、効果の大きさの観点からも、子どもを最初の対象者としました」(窪田氏)

網膜に良い影響を与える光で目の形を変える画期的な治療法

 万病の元ともなりかねない近視を、成長過程の段階から根治することを目的として開発が進められているクボタメガネ。2、3年ほど前からプロジェクトが始まったというが、どのようなメカニズムで近視の治療・抑制を実現しようとしているのだろうか。

「近い距離でスマホやパソコンの画面を頻繁に見るようになった、いわば環境的な要因によって近視の方が増加しているので、逆に目にとって良い刺激を提供して治療しようとするのがクボタメガネのアプローチになります。

 そもそも多くの近視の原因といわれているのは眼軸、つまりは角膜から網膜の長さが伸びてしまう病気。眼軸が伸びることで角膜や水晶体のレンズの焦点が網膜より手前になってしまうので遠くが見えづらくなり、目の組織も弱ってしまうので、さまざまな病気に罹ってしまうというわけです。

 光は波長の違いによって、目に悪い光やまったく無害な光、目に良い光に分けられます。クボタメガネはメガネの投影装置から、網膜に良い働きをする映像を網膜の周辺部に送り、眼軸の伸長を抑制するという仕組みになっています」(窪田氏)

 従来はメガネやレーシック手術などによって、角膜や水晶体の光の屈折を矯正することで近視の治療が行われてきた。窪田氏によれば、クボタメガネの光によって目の形を変えるアクティブシミュレーション技術は、窪田製薬が世界で初めてPoC(概念実証)を得た技術で、過去に前例がないのだそうだ。

 手術や目に対する機械的な処置を行わず、光によって網膜に直接働きかけるクボタメガネは、その画期的なアプローチから日本国内に限らず、世界のさまざまな国や人々から関心が寄せられているという。

「近視はこれまで治療薬を開発してきた疾患よりも身近で、誰もが知っている病気なので、興味を持っていただける方は多くなると予想していました。ですが、英語での発表後に10カ国以上から100件ほどのお問い合わせをいただくなど、想定以上に国際的な注目を集めていることを実感しましたね。

 いずれは日本を含めた全世界での販売を計画していますが、まずは薬事行政的に認可されやすい国から様子を見つつ販売していくことを計画しています。日本は他国と比べるとビジネスモデルの構築と認可により時間がかかる傾向にあるので、日本国内での販売は発売スタートから少し時間が経ってからになりそうです。

 将来的にはコンタクトレンズほどの大きさへの小型化や、対象年齢の拡大を図っていきます。子どもよりも大人の目のほうが調整は難しいとされていますが、先の短期試験では大人の目でもクボタメガネで与えた光の刺激に反応を見せているので、今後の試験でどれくらいの年齢まで、どれほどの効果があるのかを証明していきます。

 それだけでなく、クボタメガネのプロジェクション技術を応用し、スマホなどのデバイスに導入することで、メガネをかけたりコンタクトレンズをつけたりしなくても近視を抑制できればとも考えていますね」(窪田氏)

 現時点では子どものみが対象で、日本での発売開始の予定が立っていない「クボタメガネ」だが、それでも近視に悩む人にとってはまさしく一筋の光明。今後の研究・開発成果の発表に期待したいところだ。
(文=佐久間翔大/A4studio)

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A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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