東京、団地の街の逆転劇…足立・葛飾・江戸川区が再開発ラッシュでタワマン乱立
定住率が高いことは、高齢者にとっても心強い。高齢者福祉の切り札とされる「地域包括ケアシステム」とは、地域での助け合い、支え合いに頼らないと超高齢社会に対応できないことの裏返しでもある。このとき、地域コミュニティが長いつき合いによって培われたご近所パワーを有していることは、大いなる優位性を発揮する。周囲に顔見知りが多いと、高齢者の外出を促し、引きこもりを予防する効果にもつながる。
弱みは強み、強みは弱み
「SWOT分析」という手法がある。「強み(Strengths)を活かして弱み(Weaknesses)を克服し、機会(Opportunities)を捉えて脅威(Threats)に備える」。元来、ビジネス分野におけるマネジメント戦略策定の手法なのだが、今やまちづくりの世界でもおなじみとなった。
だが、まちの成り立ちはビジネスと比べはるかに複雑で、強みも弱みも単純には捉えられない。団地のまちが抱える今の悩みと将来の可能性は、実は強みと弱みが表裏一体の関係にあることを示している。
定住率の高さもまた然りで、定住の強みの裏には、その反作用が存在する。反作用の具体例は図表3に象徴されている。今のところ子どもが増え、高齢化も抑制されている東京の中で、東部3区だけは少子高齢化のレッドゾーンに入りつつあることがわかるだろう。
区の顔となる場所にタワマンが建ち並び、世の注目が集まることは、マイナスイメージ払拭のひとつの契機とはなる。しかし、それはあくまでも対処療法にすぎず、同時に区内格差を生み出す危険性を内包していることも忘れてはならない。
もっと根源に立ち返って考え直していかない限り、東部3区の悩みは解消できない。30代を中心とした若いファミリー層に対し、彼らの当面の関心事である子育てから老後の不安の解消に至るまで、「定住のまち」の魅力をいかに再発信していくことができるか。
言い換えるなら、従来のパラダイムを超えた「定住のまちの新たな魅力創造」。東部3区の未来は、ここにかかっている。
(文=池田利道/東京23区研究所所長)
『なぜか惹かれる足立区~東京23区「最下位」からの下剋上~』 治安が悪い、学力が低い、ヤンキーが多い……など、何かとマイナスイメージを持たれやすい足立区。しかし近年は家賃のお手傾感や物価の安さが注目を浴び、「穴場」としてテレビ番組に取り上げられることが多く、再開発の進む北千住は「住みたい街ランキング」の上位に浮上。一体足立に何が起きているのか? 人々は足立のどこに惹かれているのか? 23区研究のパイオニアで、ベストセラーとなった『23区格差』の著者があらゆるデータを用いて徹底分析してみたら、足立に東京の未来を読み解くヒントが隠されていた!