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片田珠美「精神科女医のたわごと」

田口淳之介が苦しむ大麻使用への渇望…極度のストレスと経済的困窮の“負のループ”

文=片田珠美/精神科医

大麻は「ゲートウエイ・ドラッグ(門戸開放薬)」

 大麻については、「合法化されている国や州もあり、安全」「身体への悪影響がない」「依存性がない」などと主張する方がいる。しかし、実際には脳に作用し、先ほど述べたようなさまざまな不具合を引き起こす。

 何よりも問題なのは、大麻の使用が、他の薬物を使用するきっかけになる場合が多いことだ。そのため、大麻は「ゲートウエイ・ドラッグ(門戸開放薬)」と呼ばれている。実際、依存対象が大麻から覚せい剤やコカインなどに移行することは少なくない。

 大麻から覚せい剤に移行する一因として、うつ状態を挙げておきたい。多くの施設での大規模調査から、大麻の使用期間が長期になるとうつ状態になりやすいことが指摘されているからだ。

 今後、芸能活動が困難になり、経済的にも厳しくなれば、田口被告と小嶺被告がうつ状態になる可能性も十分考えられる。その場合、ハイになるために覚せい剤に手を出す恐れもないわけではない。

 もっとも、この2人は、経済的に困窮する可能性が高いので、覚せい剤とは無縁でいられるかもしれない。かつて暴力団に所属し、覚せい剤の売人として活動していたものの、売りものの覚せい剤に手を出して破門された男性が、私の外来を受診したことがある。この男性は、覚せい剤取締法違反で何度も逮捕され、服役して出所した後、生活保護を受けるようになり、不眠と不安・焦燥感を訴えて受診したのだが、「覚せい剤の売人は、お金のある人にしか近づかない」と話してくれた。

 この男性の話が事実とすれば、覚せい剤の売人が田口被告と小嶺被告に近づく可能性は低いと私は思う。逆に、最近また逮捕された元俳優の高橋祐也容疑者は覚せい剤をなかなかやめられないのではないかと危惧する。母親の三田佳子さんが大女優であり、息子のためなら、いくらでもお金を出す可能性も否定できないからだ。

 幸か不幸か、大麻は覚せい剤ほど高価ではないので、それほどお金がなくても購入することができる。その誘惑に負けないようにして、田口被告と小嶺被告は薬物との縁をすっぱり切るべきである。

(文=片田珠美/精神科医)

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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