ダニのアレルギー性鼻炎の治療法として、画期的な「舌下錠」を使った「舌下免疫療法」が保険適用となり、「アシテア」が11月に発売されました。舌下免疫療法としてはスギ花粉症に次ぐものです。
日本人の3人に1人はハウスダストが原因で、なんらかのアレルギー疾患に悩まされており、その90%以上がダニによるものです。ダニの死骸や糞などのたんぱく質がアレルギーの原因となり、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりなどの症状を引き起こします。ダニが原因のアレルギー性鼻炎はスギ花粉症などとは違い、通年性。1年を通してダニアレルギーに悩まされることになります。
辛い思いをしているダニアレルギー性鼻炎の治療として登場したのが舌下免疫療法。免疫療法はアレルゲンを少しずつ体に入れて免疫反応を弱めていく治療法です。薄めたダニのエキスを注射していきます。しかし、注射では少なくとも週に1回程度は通院し、2年くらいは治療を続ける必要があります。
ところが、今回保険適用されたのは舌下錠を使った治療。毎日1回舌下錠を服用するものの通院する必要はないので、忙しい人には向いています。ただし、薬をもらうのに通院は2週に1回。これは、新薬なので1年間は2週間分しか薬が処方できないためです。
その効果、臨床試験では「著効」(著しく効果が高い)が約20%、「軽度・中等度改善」が約60%、合わせると改善した人は約80%に上ります。14年10月にスギ花粉症で舌下薬を使った舌下免疫療法が保険適用になり、大注目となりましたが、それと効果は同程度です。
ただ、スギ花粉症の舌下薬より、ダニによるアレルギー性鼻炎の舌下錠のほうが優れています。スギ花粉症の薬は舌下タイプでも薬液。一方、ダニアレルギーの薬は舌下錠。つまり錠剤なので携帯するにも便利で、今後はこの舌下での錠剤タイプが治療の主流になると考えられています。口や鼻はアレルゲンが侵入するところなので当然のことでしょう。
ここで疑問として浮上するのが、なぜインフルエンザ予防接種のフルミストは日本では未承認なのかという点です。耳鼻咽喉科の有力なドクターたちは「未承認の国は先進国では日本くらいです。アメリカなどは鼻からスプレーするのが当たり前の投与法です」と口にします。実際、アメリカでは10年前に、ヨーロッパでは2年前に承認されています。インフルエンザのウイルスもダニアレルギー性鼻炎と同様に鼻から入ります。
そろそろ、日本でもフルミストが承認されても良い時期なのではないでしょうか。
(文=松井宏夫/医学ジャーナリスト)