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石原結實「医療の常識を疑え!病気にならないための生き方」

緊急事態宣言発令に批判的な木村もりよ氏に、医師の私が賛同する理由

文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士
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新型ウイルス肺炎が世界で流行 緊急事態宣言下の埼玉(写真:AFP/アフロ)

 去る4月7日、ついに緊急事態宣言が発令された。小生の行きつけのレストラン、本屋、サウナ等々、皆クローズされている。16日に乗った熱海→東京間のこだま号の車両(定員75名)の乗客は、小生も含めたったの4人のみ。東京駅周辺の道路はいつも大混雑しているのにガラガラ。拾ったタクシーの運転手さんからは「今日2人目のお客さんです。ありがとうございます……」と丁重に礼を言われた。聞けば、宣言が出される前から「土日の外出自粛」要請のせいで「いつもの売り上げの70%減」と嘆いておられた。

 私の住む伊豆半島のホテルは、客数が例年同月に比べ70~80%減のところがほとんどで、ほぼ壊滅状態である。地下鉄に乗ってもガラガラの状態だが、乗っている人はほぼ100%律義にマスクをしている。1人が咳をしようものなら、乗客の視線が瞬時にその人のほうを向く。まさに社会全体が異様な状態だ。このままいくと日本の経済は一体どうなるのか心配である。

 4月8日放送の『大下容子ワイド!スクランブル』(テレビ朝日系)を観ていたら、ここ数週間テレビに出ずっぱりの「感染症の専門家」と称する医師たちが主張する「密閉、密集、密接を避けるべし」という同じ文句の繰り返しとは異質の出色の解説をしている医師の木村もりよ氏(元厚生労働省医系技官)が出演されており、そのコメントに思わず聞き入ってしまった。

「アメリカやイタリア、スペイン等々の国々に比べて、日本人のコロナウイルスの感染者数や死亡者数は一桁も二桁も少ない。コロナ感染症に対する日本人の医療方策や医療者たちの努力のおかげでうまく抑え込めている。どんな感染症もほとんどの人々が感染しないと血液中に抗体(免疫)ができないのだから、ただ“隔離”をして、抗体(免疫)のない人を増やしても、またいつ感染が再燃するとも限らない。このままいくと日本経済はもたない」

 こうおっしゃって緊急事態宣言にやや疑問の発言をされていた。するとほかのコメンテーターたちが「国民の生命を守るためにこの宣言が出されたのに何を言う」という不審な、あるいは攻撃的な視線を木村氏に送っていた。

リスクの高い人のケアこそ、重要なコロナウイルス肺炎対策

 コロナウイルス感染症に100人が感染すると「80人が無~軽症状」「20人が中~重症化し、そのうち17人は治療すると治癒、亡くなるのは3人」つまり致死率3%の肺炎である。治療薬はないので治療といっても消炎剤や解熱剤、去痰剤を用いて対症療法を施したり、酸素吸入やひどくなると人工呼吸器や人工心肺装置「ECMO(エクモ)」を使って、体調を管理し、患者自身の免疫力で新型コロナ肺炎が治癒するのを待つしかない。

 今回の緊急事態宣言の発生前までは政府当局は「ギリギリの状態でまだ持ちこたえている」という表現を繰り返していたし、まさにその通りであった。しかし、専門家会議や医療関係者らによる「このままでは医療崩壊が起こる」という危機感の発信により、宣言の発令が決断されたようだ。

 その後、医療崩壊、つまり軽症のコロナ肺炎患者で病院のベッドが「占拠」されることによって命に係わる重傷のコロナ肺炎患者の治療ができなくなる状態を防ぐため、軽症の患者約100人が都が借り切ったホテルに搬送された。聞けば「100人の患者に対して看護師が2人で終日ケアし、医師は1人日中にいるのみ」という。

 軽症の患者のために病院のベッドがいっぱいになり、その結果、重症肺炎患者の治療ができない、つまり医療崩壊が起こるとして、緊急事態宣言が出される一大要因になった。初めからこのシステムが採られていたら、宣言は出されなくてもすんだかもしれない。

 繰り返しになるが「新型コロナ肺炎の致死率は3%」であり、亡くなる方は高齢者や中等度以上の慢性腎・心・肝臓病や糖尿病などの免疫力の低下する持病のある人である。よって、こうしたリスクの高い人のケア(主治医が毎日電話して様子を聞く、看護師が家に訪問する、家庭内でできるだけ家族との濃厚接触を避ける、異常が認められたら2日待つなどと言わずすぐ治療を始める等々)を十全に行うことこそ、重要なコロナウイルス肺炎対策ではなかろうか。

 働き盛りの人の活動をストップないし抑制することにより、中小企業がバタバタと倒産し、失業者が激増していくことは目に見えている。「失業率が高くなると犯罪率や自殺率も高くなる」というのはこれまでの歴史が証明している。

 また、ジムやプールでの運動休止を余儀なくされ、自宅で過ごす時間が多くなると血液中の糖・脂肪・尿酸なども増えていき、生活習慣病、別名・運動不足病が惹起される一大要因になる。因果関係は数字には表せないかもしれないが、それによる脳卒中や心臓病の発作、糖尿病の悪化等々も懸念される。

 こう考えてくると、木村氏がおっしゃることは大いに首肯できる。

 5月6までの緊急事態宣言による「外出の自粛の結果起こる新型コロナウイルス肺炎の抑え込みの成功、はたまた経済活動のストップによる種々の弊害」については、今、定かに予想することは困難である。しかし、その結果を、万一、将来同様の感染症に襲われることがあった場合、木村氏のご意見を参考にし、対策を立てられるとよい。

日頃から「免疫力」を高める行動を

 それにしても、テレビに出てくる感染症の専門家たちは、異口同音にコロナ感染症対策として「三密を避ける」「手洗いの励行」しか述べてこなかったのは不思議である。風邪でもインフルエンザでも細菌性の肺炎でも、すべての感染症で病原体(ウイルスや細菌)に接触しても、発症する人としない人がいるのは、それぞれの人が持っている免疫力の差である。

 免疫力を高めるには、神様が我々動物に与えてくれた「病気」のときは発熱し、食欲不振に陥る」、つまり「体を温める」ことと「空腹の時間をつくる」の2つに尽きる。体温が1℃上昇すると数時間免疫力は数倍になるという研究もある。2016年、大隈良典博士に与えられたノーベル生理学・医学賞は「空腹のとき、細胞内の古いたんぱく質、老廃物、ウイルスがその細胞自身によって消化される=オートファジー」の現象についてであった。

 日頃、入浴、サウナ、運動で体を温め、熱々の鍋焼きうどん、みそ汁、すき焼きを食べ、熱い紅茶に黒糖、またはハチミツとともにすりおろし生姜を“うまい”と思う量を入れて作る生姜紅茶を1日3杯を目処に愛飲したり、1日1~2回は空腹の時間をつくることこそ、体の免疫力を高め、コロナウイルス感染症の対策にもっとも大切な方策と小生は確信している。

 カミュの『ペスト』が大増刷されているようだが、16年前に上梓した拙著『なぜか免疫力が高い人の生活習慣』(幻冬舎)がなんと15年ぶりに増刷された。この1カ月で3回(計1万1000部)の増刷である。

 一般の人々も、やはり自分の「免疫力」こそがコロナウイルス感染症の予防に大切だということを、本能的におわかりなのであろう。

(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)

石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士

石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士

1948年長崎市生まれ。長崎大学医学部を卒業後、血液内科を専攻。「白血球の働きと食物・運動の関係」について研究し、同大学大学院博士課程修了。スイスの自然療法病院B・ベンナー・クリニックや、モスクワの断食療法病院でガンをはじめとする種々の病気、自然療法を勉強。コーカサス地方(ジョージア共和国)の長寿村にも長寿食の研究に5回赴く。現在は東京で漢方薬処方をするクリニックを開く傍ら、伊豆で健康増進を目的とする保養所、ヒポクラティック・サナトリウムを運営。著書はベストセラーとなった『生姜力』(主婦と生活社)、『「食べない」健康法』(PHP文庫)、『「体を温める」と病気は必ず治る』(三笠書房)、石原慎太郎氏との共著『老いを生きる自信』(PHP文庫)、『コロナは恐くない 怖いのはあなたの「血の汚れ」だ』など、330冊以上にのぼる。著書は韓国、中国、台湾、アメリカ、ロシア、ドイツ、フランス、タイなど世界各国で合計100冊以上翻訳出版されている。1995~2008年まで、日本テレビ系「おもいッきりテレビ」へのレギュラー出演など、テレビ、ラジオ、講演などでも活躍中。先祖は代々、鉄砲伝来で有名な種子島藩の御殿医。

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