今回は、乳がんの話で盛り上がっていますよ。芸能関係者が乳がんになったようです。毎年乳がん検診を受けていたのに、進行性の乳がんになり、そして1年半近く入院治療していたという報道を受けて、あまり芸能情報に親しみのない“非常識君”、“極論君”、“常識君”が素直なホンネを語っています。
非常識君は、「毎年がん検診を受けていても、がんの早期発見ができないのであれば、がん検診をしないという選択肢も考えられる」という意見です。これに対し常識君は、「たった1例の例外を挙げて、全体を否定するのはいかがなものか?」と返答しています。
そこで非常識君は少々勉強したらしく、「カナダの大規模な臨床研究では、がん検診した群とがん検診しない群で差がなかったそうですよ」と言っています。確かにこの臨床研究は乳がんによる死亡者を減らすためには、早期発見・早期治療が何より有益という盲信に対するひとつの警鐘とも考えられます。しかし、これもひとつの例外にあたる臨床研究かもしれません。
日本でも本当に乳がん検診が生命予後の延長に役立つのかについて臨床研究をやってもらいたいですね。
臨床研究は不要?
そこで極論君の発言です。「そんな臨床研究は不要だ」という意見です。
「信頼性のある臨床研究はくじ引きで、がん検診を受ける群と受けない群を決めるんでしょ。そんな非倫理的なことはできないよ。だって、がん検診が役立つと思って、医療業界全体でがん検診の啓蒙をおこなっているのに。つまり専門家は必要と思っているのでしょ。なのに、くじ引きで不要な群に入った人は本当に不幸なくじを引いたことになるかもしれない」
確かにそうですね。常識君が追加します。
「乳がんも昔は小さな乳がんに対しても、乳房は全部取って、その下にある大胸筋という大きな筋肉も切除したので、手術後は皮膚の下は肋骨が触れて、まるで昔の洗濯板のような胸だったでしょ。それを欧米のくじ引き臨床研究で、従来通りの乳房も大胸筋も切除する大きな手術と、腫瘍だけを切除する手術とを比較して、多くの結果が5年生存率も10年生存率も2つの手術の間に差がないとなって、いまや昔ながらの大きな手術をすることはなくなりましたよね。当時は腫瘍だけを切除する手術は倫理に反すると絶叫していた乳がんの専門医もいました。でも結論は差がないので、そんな大きな手術は不要となったのですね」