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ジャガイモを多く食べる人ほど高血圧になる?発がん性を抑える食べ方とは

文=ヘルスプレス編集部
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ポテトチップスが店頭から消えた! ジャガイモ料理が高血圧の原因に!?の画像1ポテチが店頭から消えた!(depositphotos.com)

 ポテトチップスのトップ2社、カルビーと湖池屋が、北海道産ジャガイモを原料とする一部のポテトチップスを販売休止している。スーパーマーケットやコンビニエンスストアの棚からほとんどのポテチが消えている。

 原因は、昨夏、北海道に3度も上陸した大型台風がジャガイモ畑を壊滅させ、北海道産ジャガイモの収穫量が激減したことによる。両社とも原料に使うジャガイモのおよそ7~8割を北海道産に依存していることから、原料の調達が難しくなったのだ。「ポテチスト」にはショッキングな出来事だが、もう少し探ってみよう。

北海道産ジャガイモは前年比約10%減

 カルビーは、4月15日以降、「ポテトチップス 関東だししょうゆ」など地域限定商品18品目の販売終了。さらに4月22日以降、「ポテトチップスうすしお味」「ピザポテト」など33品目の販売停止のほか、一部品目の販売を終了。ポテチは委託生産が中心であることから、産地の切替えや原料の確保は困難だが、定番商品の生産は続けている。

 湖池屋は、3月25日以降、「125gお徳用すっぱムーチョチップスさっぱり梅味」など9品目の販売を休止、「ポテトチップス リッチコンソメ」「頑固あげポテト」など16品目の販売を休止・終了。主力商品の「ポテトチップス のり塩」「カラムーチョ」などは生産する。海外産ジャガイモに頼らず、九州産ジャガイモの調達に努めるとしている。

 北海道農政事務所によれば、北海道産ジャガイモは、2016年6月の日照不足と長雨で生育が遅れたうえに、8月の台風の接近や上陸によって生育が阻害された。主産地の十勝地方では、畑への浸水による腐敗・廃棄の甚大な被害が発生。出荷量は、前年比約10%減の152万6000tの頭打ちとなった。

 国内生産量のおよそ8割を占める北海道産ジャガイモは、毎年8月末から10月中旬に収穫し、9月から翌年の5月までに出荷。11月以降は倉庫で低温貯蔵し、出荷する。今年は収穫量の激減で4月中旬時点で、ストックはほぼゼロだ。

 JA鹿児島県経済連によると、不運にも4月から出荷する鹿児島県産も降雨の影響で収穫が遅れ、平年より出荷量が約10%も減少。東京都中央卸売市場でも異変が及ぶ。3月下旬の北海道産平均卸値が1kgあたり221円に高騰、過去5年平均よりもおよそ50%も高値を付けている。

 極めてリスキーな実情だが、ポテチストにはさらにつらい状況が待ち受けている。食べられなくなると、いっそう食べたくなるからだ。だが、カロリーオーバー、食品添加物(アミノ酸)や発がん性化学物質アクリルアミドのリスク、塩分や脂肪の過剰摂取をはじめ、味覚障害、栄養の偏り、がん、心臓病、腎臓病、動脈硬化、高血圧、血栓症、肥満などの生活習慣病に至るまで、さまざまな重篤疾患の高い発症リスクなど、ポテチのリスキーさを無視できない状況は変わらない。

 ポテチについては、以下の情報もぜひ参照してほしい。

参考:フライドポテトやポテトチップスに生じる多量の劇物 「アクリルアミド」の正体
参考:焼く、揚げる、炒める……やはり食べ物の「焦げ」には発がん性物質! 食品安全委員会が注意喚起

ジャガイモ料理を食べる頻度が高い人ほど高血圧に罹りやすい?

 その一方、ジャガイモ料理の意外な真相を探求した研究がある。

 2016年5月17日、ポテトチップスを除いたジャガイモ料理を食べる頻度が高い人ほど高血圧に罹りやすいとする意外な研究結果が『British Medical Journal(BMJ)電子版』に掲載された(Lea Borgi, Eric B Rimm, Walter C Willett, John P Forman. Potato intake and incidence of hypertension: results from three prospective US cohort studies. BMJ 2016; 353)。

 塩分(ナトリウム)を摂り過ぎると、血圧が上がる。果物類、豆類、野菜類、芋類、肉類、魚介類に豊富なカリウムは、体内の余分なナトリウムを尿として排泄するので、血圧を下げる効果がある。

 ジャガイモは、カリウムの含有量が多い(100gあたり330mg)ため、ジャガイモをよく食べれば高血圧を予防できる。それが世界の常識とされてきた。だが、ジャガイモ料理の摂取と高血圧の関係性を究明した研究はほとんどない。

 米国の研究グループ(Eric B Rimm教授、Walter C Willett教授、Lea Borgi准教授、John P Forman助教授)は、米国の男女医療従事者約18万7453人を20年間にわたって追跡し、どのようなジャガイモ料理をどのくらいの頻度で食べたかを調査。焼きポテト/茹でポテト/マッシュポテト、フライドポテト、ポテトチップスの摂取と高血圧の関係を分析した。

 その結果、7万7726人(約41.5%)が高血圧と診断され、ポテトチップスを除いたジャガイモ料理を食べる頻度が高い人ほど、高血圧に罹りやすいことが判明した。

ジャガイモはGIが高いので血糖値が上がりやすく高血圧を引き起こすリスクが高い

 このような大規模な前向きコホート(対象者母集団)研究は、どのように進められたのだろうか。使用したのは、3つのコホートデータだ。

第1群:米国看護師健康調査(NHS:1976年登録開始、30~55歳の女性、12万700人)
第2群:米国看護師健康調査II(NHS II:1989年登録開始、25~42歳の女性、11万6430人)
第3群:米国医療従事者追跡調査(HPFS:1986年登録開始、40~75歳の男性、5万1529人)。

 このうち研究開始時に高血圧でなかったNHS:6万2175人、NHS II:8万8475人、HPFS:3万6803人が対象になった。

 調査方法は次のとおり。

 まず、ジャガイモ料理を「焼きポテト/茹でポテト/マッシュポテトのいずれか」「フライドポテト」「ポテトチップス」の3つに分類。

 ジャガイモ料理の1回分の摂取量を決定。「焼きポテト/茹でポテト/マッシュポテト」はジャガイモ1個分または1カップ、「フライドポテト」は113g(4オンス)または1皿、「ポテチ」は小袋または28g(1オンス)。

 次に、対象群を4つの摂取量別に「月に1回未満」「月に1~3回」「週に1~3回」「週に4回以上」の4つに分類。

 その結果、高血圧と診断された7万7726人(約41.5%)の内訳は、NHS:3万5728人、NHS II:2万5246人、HPFS:1万6752人。摂取量が「週に4回以上」の集団は、「月に1回未満」の集団と比較すると、高血圧の発症リスクが次のように変化した。

焼きポテト/茹でポテト/マッシュポテト群
 NHS:13%増加、NHS II:25%増加、HPFS:5%減少
フライドポテト群
 NHS:17%増加、NHS II:17%増加、HPFS:16%増加
ポテトチップス群
 NHS:3%増加、NHS II:2%増加、HPFS:14%減少

 すなわち、「焼きポテト/茹でポテト/マッシュポテト」を週に4回以上食べる女性と、「フライドポテト」を週に4回以上食べる男女は、高血圧のリスクが有意に高かった。一方、「ポテトチップス」群は、男女ともリスクの増加は有意に低かった。

ジャガイモを食べすぎない焦がさない。食べる時は、蒸す、茹でる、煮る

 ジャガイモは、GI(グリセミック・インデックス)が90を示すグリセミック炭水化物(高GI食品)だが、かつ高血圧の予防効果があるカリウムを豊富に含む、いわばトレードオフ(両立不可能)の功罪があることから、高血圧の発症リスクへの影響は未解明だった。ちなみに、GIは、食後血糖値の上昇度や糖質の吸収度を示す指標で、摂取2時間までに血液中に入る糖質の量だ。

 2003年にWHO(世界保健機関)は、低GI食品が過体重、肥満、2型糖尿病の発症リスクを低減させると発表、高GI食品であるジャガイモの関与も示唆した。つまり、ジャガイモは、GIが高いので、血糖値が上がりやすく、高血圧を引き起こすリスクが高い事実は明らかだ。

 今回の研究が示唆する事実は興味深い。

 この研究の目的は、ジャガイモ料理の弊害を警告したり、ポテトチップスの安全性を推奨することで決してはない。むしろジャガイモの適切な食べ方や料理の楽しみ方をアドバイスした研究と考えられる。

 なぜなら研究によれば、1日1回の焼きポテト、茹でポテト、マッシュポテトを、1日1回の非デンプン質野菜に置き換えるだけで、高血圧のリスクは有意に低下したからだ。非デンプン質野菜とは、ほうれん草、小松菜、チンゲンサイ、セロリ、ピーマン、トマトなどの緑黄色野菜だ。繊維質が多いゴボウや、低カロリーのキノコ類もデンプンが少ない。

 果物と非でんぷん質野菜を食べ合わせれば、体重が減るとする研究もある(メディカルカルトリビューンmedical-tribune.co.jp/news/2015/0926037422/)。

 食べるジャガイモ1食分を非デンプン質野菜に置き換えたり、低GI食品のサツマイモ(GI55)を食べるのもいいだろう(GI値リスト)。

 結論はシンプルだ。ジャガイモを食べすぎない、焦がさない。食べる時は、蒸す(じゃがバター、皮付きこふきいも)、茹でる(マッシュポテト)、煮る(肉じゃが、カレー、シチュー)。そうすれば、発がん性化学物質のアクリルアミドは発生しない(『「食べもの神話」の落とし穴』高橋久仁子/講談社ブルーバックス)。

 バランスのいい規則的な食習慣、適度な運動、十分な睡眠などに切り替えるだけでも、ポテトチップスへの甘い誘惑は断てると信じたい。それこそが、人間だけに授けられたロバストネス(柔軟な剛健さ)だからだ。
(文=ヘルスプレス編集部)

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