2月14日、緊急事態宣言下でのバレンタインではあったが、チョコレートを扱う店は大いに賑わいを見せていた。初詣さえも自粛傾向にあったにもかかわらず、バレンタインデーは健在のようだ。
近年、バレンタインデーに限らず普段から、チョコレートは単なる嗜好品としてだけでなく、その健康効果に関心が集まっている。チョコレートの主原料であるカカオには、カテキンなどさまざまなポリフェノールが含まれ、総称としてカカオポリフェノールと呼ばれる。カカオポリフェノールは抗酸化作用が強く、老化の原因となる活性酸素から体を守る働きがある。このほかチョコレートには食物繊維であるリグニンや、リラックス効果のあるテオブロミンが含まれることから、「健康に良い」というイメージも持たれている。
また、この数年、カカオ高濃度のチョコレートが、健康志向の高い人の間で人気となっている。しかし、チョコレートの健康効果は、すべての人に当てはまるものではないと、予防医療研究協会理事長で麹町皮膚科・形成外科クリニック院長の苅部淳医師は警鐘を鳴らす。
チョコレートと金属アレルギー
一般的なチョコレートには約30~40%のカカオが含まれているが、この数年、70~80%という高濃度のチョコレートも人気となっている。しかし、そういった高濃度のカカオを含むチョコレートには、注意が必要だという。
「高濃度のカカオは健康に良いといったイメージを持つ人も多いと思いますが、実は独立行政法人国民生活センターによって注意喚起が行われています。その理由は、カカオに含まれるニッケルが金属アレルギーの原因となるからです」(苅部医師)
金属アレルギーがある人にとってニッケルは避けるべき成分であり、普段の生活のなかではニッケルを含む金属製品を摂取しないように十分注意しているだろう。しかし、あまり広く知られていないが、食品にもニッケルが含まれるものが少なくない。その代表的なものが、コーヒーやココア、チョコレートであり、特に高カカオチョコレートには、通常の1.9~3.8倍のニッケルが含まれていることがわかっている。
検査は10~3月まで(夏場は不可)
ニッケルアレルギーを持つ人がチョコレート、コーヒーやココアを意識せずに摂取し、皮膚炎が増悪するケースもあるため、注意が必要だ。また、原因がはっきりしない皮膚炎に悩まされている人は、一度は検査を受けるべきだろう。
「金属アレルギー検査は10月から3月(医療機関によっては4月)までなので、思い当たる症状、貴金属でかぶれる方は、ぜひご相談ください」(同)
一般的に金属アレルギーの検査は、金属パッチテストによって行われる。パッチテストは皮膚に貼付し、48時間後、72時間後、場合によっては1週間後に皮膚の反応を見る検査である。72時間判定(3日後)まではシャワーは控える必要があり、汗をかく季節はパッチテストで正しい判定ができないため、通常は夏場を避けて検査を行う。
チョコレートを食べた後に皮膚炎が起きた場合は見過ごさず、医師に相談してほしい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)