肉や魚を食べないと、内臓障害やアルツハイマー病のリスク増?専門家が解説
世の中にはさまざまな食事法があります。炭水化物を摂取せずに肉ばかり食べることを勧めるという非常識なものや、一切の食物を加熱せずに食べるべきだとする非現実的なものもあります。何を信じ、どう実践しようと個人の自由なので、筆者がいちいち口を挟むことではないかもしれませんが、知らずに実践して健康を害する方もいるので、参考までに、これらの食事法の問題点を説明します。
動物性食品を一切摂らないうえに、「体を冷やす」という理由から果物も含めて生の食品も食べることを禁じ、高温での加熱には耐えられないオメガ6脂肪酸を多く含んだごま油で根菜を必要以上に炒める料理法を勧める食事法があります。
「玄米さえ食べていれば大丈夫だ」などと、「いくらなんでも、それはないでしょう」と言いたくなるような説を振りかざし、人々を不健康に導いているような食事法ですが、なぜかこの手の言説は、ストイックであればあるほど強烈に支持する人がいるという事実があります。
そもそも人間は雑食なので、単一の食品では健康に生きていくことは困難です。しかし、健康に人生をまっとうしたいと願うのであれば、自分が食べるものは自分の体の欲求によって選ぶというのが、まともな考え方だと思います。
動物性食品を一切摂らないとビタミンB12が不足する
必要以上に動物の肉を多食することについては、筆者はこれまでも本連載で批判的な意見を述べてきましたので、ここでは繰り返しませんが、それがあらゆる意味で不自然なことだという点だけは再度申し上げておきます。
そうかといって、一切の動物性食品を拒絶するのも、明らかな間違いです。ごく一部の例外的な人を除いて、その食事法はやめたほうが賢明です。動物性食品を摂取しないと、私たちにとっての必須栄養素のひとつであるビタミンB12が摂れません。植物性食品にもごくわずかに含んでいるものもありますが、私たちの体の必要量には到底及びません。
ビタミンB12を摂取できないと、さまざまな全身症状が現れます。たとえば、胃腸などの消化器に障害が起き、食欲不振になります。神経系の働きが悪化することで、手足のしびれも起きます。それが進行すると、神経障害を引き起こして、アルツハイマー、味覚障害、歩行困難、失禁、うつなどに進行していくこともわかっており、高齢者でビタミンB12の濃度が低い人は、アルツハイマー病になる可能性が、なんと通常の人の4倍近くにもなるといわれています。そして、最悪のケースは悪性貧血になってしまいます。