肉や魚を食べないと、内臓障害やアルツハイマー病のリスク増?専門家が解説
しかしご安心ください。お肉やお魚、貝類など、適量の動物性食品を摂取していれば、このようなことは起こりません。しかもビタミンB12は、肝臓に約3年分も貯蔵しておくことが可能なのです。逆に言うと、ビタミンB12を摂取しなくても、肝臓に満タンに貯蔵されていれば3年間はもつのです。
玄米と野菜ばかりの食生活にした人が、3年くらいたつとだんだん顔色が悪くなり、体調が悪化し、元気もなくなるという例を見たことがある方もいると思います。その背景には、こんな理由があったのです。
アメリカ人にも、ヴィーガン(厳格な菜食主義者)は多数いますが、彼らの多くは自分たちの食生活ではビタミンB12が欠落することや、その危険性を知っているので、サプリメントで補っています。アメリカのドラッグストアには多数のサプリメントが置いてあり、必要に応じて特定の栄養素を摂ることが当たり前になっているようです。それがいいかどうかは別問題ですが。
筆者が「最悪だ」と思うのは、ビタミンB12の不足や欠落によって体調が悪化した時に、それを「好転反応だ」と言って無視したり、間違った食事法を強要し続けることです。
間違った食生活に固執するワケ
また、これもよくある話ですが、肉を多食していた人が動物性食品の摂取をやめると、一時的に体調が良くなったように思ってしまい、その食生活を続けてしまうケースがあります。その結果、徐々に体力がなくなり、体調が悪くなっても頑なに「こんなはずはない、いつかは体調が戻る」と信じ、間違った食生活に固執してしまうという困った事態に陥るのです。
筆者は、そういう人を何人も見てきました。そのたびに、どうしてこんなにわかりきったことを理解できなくなってしまうのだろうと不思議に思います。
「動物愛護」の観点から一切の動物性食品を食べなくなった、という方もいるようですが、「動物を愛護する以前に自分を愛護しなさい」と言いたいところです。せめて、魚介類だけでも食べなさい、と説得したい。
ただ、ヴィーガンの食生活を長く続けていても、健康を維持できている人もいるので、一概にそれがダメだとも言い切れない面もあるのです。あくまでも「一般的に」「多くの場合は」という条件が付きますが、動物性食品を一切摂らない食生活は続けるべきではない、と結論付けていいと思います。
ちなみに筆者の知人に、玄米を中心に食べ、動物性食品を拒絶するという食事法を教えている先生がいますが、本人は肉も魚も召し上がります。また、すべての食物を加熱せずに調理する食事法を教える学校を主宰している方も、自分自身はそれを実践していません。二人ともとても元気ですが、自分が実践していない食事法を教えることに関して、罪悪感を持たないのか、今度お会いした時に聞いてみようと思っています。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)