秋に旬を迎えるサンマ、8月~9月頃までに獲れる新サンマよりも10月~11月頃に獲れるサンマのほうが、脂がのっていて美味しいとか。今年は不漁のため、例年にくらべて食卓にのぼることが少ないかもしれません。
サンマをはじめサバ、イワシなどの青魚(背が青い魚)の特徴的な栄養成分は、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)です。青魚は両方の成分が豊富です。血栓予防、動脈硬化予防効果があります。
近年、EPA、DHAは、ほかにも素晴らしいパワーのあることがわかりました。それを見つけたのが、自治医科大学付属さいたま医療センターの植木彰教授です。
その研究報告によると、同じ年齢のアルツハイマー病患者と健康な方の食事分析をしたところ、アルツハイマー患者の多くが、EPA、DHAの摂取量が少なかったとされています。このことから、サンマなどの青魚に豊富に含まれるEPA、DHAにアルツハイマー病の予防効果が期待できるらしいのです。
残念ながら、アルツハイマー病は一度発症してしまった人への食事での回復は、いまのところ難しいとされていますが、アルツハイマー病にならないように食事をふくめ生活習慣を改善することによって予防できると考えられています。
EPA、DHAは、そもそもカラダの中で合成されるのですが、年齢とともに必要十分な量が合成できるとは限りません。そのため、EPA、DHAも必須脂肪酸ととらえる考え方もあります。必須脂肪酸とは、カラダに不可欠なもので食品からしか摂取できないものをいいます。
ところが、こんなにもカラダにも脳にも良い効果をもたらすEPA、DHAにも弱点があります。それは酸化しやすいことです。酸化してしまうと優れた効果が期待できなくなります。
そのため、抗酸化ビタミンであるビタミンA、ビタミンC、ビタミンEを含む食品と一緒にとることがおすすめです。たとえば、パセリ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜は、すべての抗酸化ビタミンが含まれています。先述の植木彰教授は、1日80gの青魚、最低2回の緑黄色野菜をとることが認知症予防に大切であると指摘しています。
また、調理法によって損失量が増加してしまいます。そのため、EPA、DHAを余すことなく食べるには、刺身がおすすめです。蛇足ですが、さきほどの研究で、アルツハイマー患者の多くにエネルギー過剰摂取(適正カロリーを超えている)もみられたとのことでした。エネルギーの過剰摂取は、活性酸素が大量に発生することから酸化ストレスになり、脳の海馬に障害をもたらす要因になることを示唆しています。
腹八分目をこころがけ、青魚を適量(50g~100g程度)とりいれ、栄養バランスの取れたお食事をして脳の健康を保ちましょう。
(文=森由香子/管理栄養士)