インターネット上に公開されている「離乳食レシピ」のなかには、蜂蜜を使用しているものがあり、そのレシピ通りに調理して乳児に与えたところ、死亡するという事故が起きてしまいました。
蜂蜜の中には、ボツリヌス菌が潜在的に混ざっている可能性があり、蜂蜜の瓶などには「1歳未満の子供には食べさせないように」といった表示があります。ボツリヌス菌は土壌、海や河川に広く存在しており、120度以上で4分以上加熱しなければ死滅しないため、家庭の一般的な調理では殺菌できません。
ボツリヌス菌は、きなこ、黒糖、野菜などにも潜在的に混入している可能性があります。そのため、加熱していない根菜類のスープなども離乳食として与えるべきではありません。
さまざまな媒体で、食品添加物は「食べるな危険」と警告されていますが、実際のところ食品添加物は、使用量を大幅に間違わない限り人体に危害を与えることはありません。
鶏卵の生食は危険!
アメリカ人と食事をしていると、「目玉焼き」は裏表を完全に焼いたものでないと口にしないという方をよくみかけます。彼らは、「鶏卵は潜在的にサルモネラに汚染されている可能性がある」と、子供の頃から教育を受けているため、よく焼いたものしか食べないのです。
もちろん、小さな子供に生卵を食べさせることもありません。「とろとろふわふわ」の半熟オムレツを食べさせることもありません。
食品は、安全の土台があって、その上でおいしいことが必要です。単においしいからといって、半熟のオムレツを小さな子供に食べさせることは危険なのです。欧米人は、卵かけごはん、半熟のゆで卵、黄身が生の目玉焼きなどは決して口にしません。サルモネラは75度以上で1分加熱すれば死滅するという知識を持っているので、加熱が不十分な場合は食べないのです。
サルモネラは、卵の殻の表面についている場合と、卵の中に侵入してしまっている場合があります。表面についている場合は、卵を割る時に注意すれば、サルモネラ中毒を防ぐことができますが、中に入ってしまっている場合は、注意しても中毒を防ぐことはできません。
欧米では、産卵後すぐに冷蔵保管することが法律で定められています。日本では、冷蔵販売されている店は少ないのが現実です。
サルモネラ中毒は、ある程度サルモネラが増殖している場合に発生します。現在の卵の賞味期限は、「気温25度で保管した場合に、サルモネラ中毒にならない期間」として設定されています。しかし、これから気温が上がる時季に、車の中に放置した卵や、鶏舎の中で産んでから集卵まで時間がたっている卵などは、あとから冷却してもすでにサルモネラが増殖しているおそれがあります。すなわち、賞味期限前でもサルモネラ中毒になる可能性があるのです。
卵の成分にDHAなどが加わっているかといったことを気にするよりも、毎日確実に集卵されているか、集卵後すぐに冷蔵管理され、販売時点も冷蔵保管されているかなどに着目して卵を選ぶことが、サルモネラ中毒を防ぐためには重要です。
小さな子供や、身体の弱っている人、試験前日など重要な時には、卵は潜在的にサルモネラ中毒の危険性があることを留意して、慎重に調理したものを食べましょう。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)
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