マインドフルネスとは、一言で言えば“心のエクササイズ”だ。瞑想などによって頭のなかをクリアにし、心を整えることで、ストレス解消や集中力の向上に効果があるとされている。4~5年前からシリコンバレーなどアメリカのビジネスパーソンの間で注目されるようになり、アップルやグーグル、マッキンゼー・アンド・カンパニーなどの大企業が取り入れていることでも有名だ。
ジムを訪れる人のなかには、この「マインドフルネスを試したい」という目的の人もいるという。
「自分で調べてマインドフルネスをやってみたけど、そのやり方が正しいかどうかわからないという人が多いですね。確かに自己流では難しいですが、インストラクターの誘導があれば自然にできます。静寂のなかで、頭のなかを空っぽにしていきます」(同)
体を疲れさせ、マインドフルネスで頭のなかをクリアにしたら、いよいよ第4段階の「抜く」に移る。つまり、「最高の脱力」である。
「ここはどこだっけ?」という感覚に
脱力の方法は、きわめて簡単だ。照明を落として暗くなった部屋でマットの上に寝転がり、静寂に包まれながら、すべての感覚を休ませて体を弛緩させる。
一見すると寝ているだけのようだが、その感覚は「寝る」というよりも、むしろ「意識を失う」に近いものだという。
「もう一度繰り返しますが、現代人の疲れは体ではなく脳からきています。スマートフォンやパソコンを日々使うことで、自分でも気づかないうちに疲れがたまっていくんです。脳のプレッシャーを取り払い、すべてを休んでいただくと、海の上でふわふわ浮いている感覚になる。それがリセットです。脱力から目覚めたときは『ここはどこだっけ?』という感覚になるでしょう」(同)
これでプログラムは終了する。まさに、現代人の心と体の疲労を取り除くためだけに考えられた内容といえる。
中高年には、疲労回復のためにマッサージに行く人も多い。しかし、マッサージは筋肉を弛緩させることがメインのため、日常的に体を動かす人には効果があるが、デスクワーク中心の人の疲労回復にはあまり向かないという。
まず筋肉を動かし、その上で緩めるという動作を行うことで、疲れにくい体になっていくのだ。疲労回復でコンディションを整えることは、仕事のパフォーマンスを上げるための重要な要素だ。「体のメンテナンスを後回しにしていると、中高年になってから自分が困ることになる」と松尾さんは言う。