子が親より早く死ぬ事例、なぜ増えているのか…平均寿命短縮化で老後2千万円も不要?
弁護士、エコノミスト、大学教授からなる金融庁審議会のワーキンググループが2018年秋以来、12回も会合を開いて審議して作成した「公的年金以外の老後資金が2000万円必要」とする報告書問題をめぐり、国会でも国民の間でも大騒ぎになっている。
それは、ここ数年官民あげて喧伝している「人生100年時代」に起因していると思われる。
厚生労働省から昨年発表された平均寿命は、男性は81.09歳、女性は87.26歳で、100歳以上の人が6万9785人(18年9月時点)もいらっしゃる。毎年、平均寿命が延びているので、そのうち国民のほとんどが100歳近くまで生きるという“妄想”が「人生100年時代」という合言葉を生み出したのであろう。
平均寿命とは、そもそも「今年生まれた赤ちゃんが、その後何歳まで生きるのかの予測寿命」である。今、100歳前後の超高齢に達している方々は、明治の末~大正~昭和初期のお生まれだ。一方、文末の図表のごとく、去年1年間で「55歳以下でがんで亡くなった有名人」が少なくないということは、一般人はもっともっと多くの人が“若くして”がん死されている、ということになる。
なぜ「55歳以下」をみるのかといえば、男女ひっくるめた平均寿命を仮に85歳とすると、1世代=30年だから85歳-30歳=55歳ということになる。つまり、55歳以下で亡くなる方の親は、まだ存命の可能性が高い。つまり、「子どもが親より先に亡くなる逆さ仏(逆縁)」の現象が今、日本のあちこちで起こっている。
なぜか。
Sirtuin(=長寿遺伝子)
今、100歳前後に達しておられる長寿者の方々は、明治の末~大正~昭和初期に生まれ、粗食でよく歩き、肉体労働を余儀なくされた。ときには食物がなくて“空腹”をいやというほどの味わいながら育った。
00年に、アメリカのマサチューセッツ工科大学の生物学教授、レオナルド・ガレンテ博士が「空腹のとき、Sirtuin(=長寿遺伝子)が働き、長寿が約束される」という研究発表をしている。
16年には、日本の大隅良典博士の「空腹(飢餓)のときに、人体を構成する60兆個の細胞それぞれの中に入りこんでいる古いタンパク質、老廃物、ウイルスなどの有害物が処理される=autophagy(自食作用)」という研究に対して、ノーベル医学・生理学賞が授与された。