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『リーガルハイ』は嘘だらけ?違法行為満載、ありえない登場人物、新証拠探す弁護士…

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●変わり始めた外資系事務所

 ところで、法曹界における外資の参入障壁は高く、海外のローファームが日本で日本法の弁護士を雇えるようになったのは05年からだ。それ以前は、外国法事務弁護士は日本法の弁護士に雇われるかたちでしか活動ができなかった。同時に日本の法律事務所と共同事業としてなら、外資系の事務所も活動できるようになった。事務所名は日本法の事務所名と外資系の事務所名を合体させた上に「外国法事務」やら「外国法共同事業」などの言葉も加わるので、とてつもなく長い名前の事務所がいくつも誕生した。中でも最長は「東京青山・青木・狛法律事務所ベーカー・アンド・マッケンジー外国法事務弁護士事務所(外国法共同事業)」だったが、12年9月に「東京青山・青木・狛法律事務所」がとれ、現在では「ベーカー・アンド・マッケンジー法律事務所(外国法共同事業)」になっている。

 一般に海外のローファームが日本で事務所を開く場合、既存の事務所との共同事業という形を取る場合と、雇った日本人弁護士に日本法の事務所を設立させ、そことの共同事業という形を取る場合とがある。前出の東京青山・青木・狛とベーカー・アンド・マッケンジーのケースは前者のケースだ。

後者の場合、かつては本国のローファームが日本の拠点の弁護士をローカルスタッフとしてしか扱わないケースが多かった。従って、英語は話せても日本人の顧客とのコミュニケーションが取れないサイボーグ型の弁護士を雇ってしまい、日本での展開に苦戦するケースが多かった。

 しかし、近年は日本人の弁護士を名実ともにパートナーとして扱う事務所が出始めており、グローバル展開をする日本企業のクライアントを徐々に増やしつつある。

●徳洲会贈収賄事件担当検事はリーガルハイを真似た?

 話をドラマに戻そう。第2期で安藤貴和の主張を変えさせ、古美門初の敗北の原因を作った面会者・吉永慶子。初回からひっぱり続け、最終回でようやくその正体がわかり、実は羽生晴樹検事(岡田将生)だったということが判明するのだが、『リーガルハイ』の最終回が放送されてから3日後の日本経済新聞に、衝撃的な記事が載った。徳洲会の贈収賄事件の捜査担当検事が、被告の一人で徳田家の長女・越沢徳美氏に弁護士面会の名目で接触したというのである。

 起訴後も検事は被告に接触できるが、取り調べ中と違い、被告側は起訴後の面会を拒否できる。まるで『リーガルハイ』を地で行くような話で、越沢氏の弁護人である弘中惇一郎弁護士が明らかにした、と記事にはある。東京地検は否定、東京拘置所はノーコメントだという。弘中弁護士といえば、あの厚生労働省の村木厚子氏の代理人を務めるなど、数々の輝かしい戦績を残しているスゴ腕の弁護士である。

 この記事の感想を、刑事事件弁護のエキスパートで、反検察モード全開の弁護士に聞いてみたところ、この弁護士ですら「検察官が身分を偽っての面会だなんて聞いたことがない。事実だとしたら、『リーガルハイ』を見て真似をしたとしか考えられない」という。

 検察OBの弁護士も、「弘中弁護士ほどの人がウソを言うはずがないと思う一方で、検察も否定しているとなると、真実はよくわからない。起訴後に被告人に会う必要性は基本的にないが、会う必要が出てきたら身分を偽らずに普通に呼べばいい。弘中弁護士ほどの代理人がついている被告に、そんなすぐバレて筒抜けになるようなことをすればどうなるか、考えなくてもわかるはず」という。

それなら拘置所はどうか。検事の言うことなら、なんでも聞いてしまう体質なのか。

「東京拘置所は良くも悪くもものすごく堅く、まったく融通が利かない。例えば、被告に調書を読み聞かせている途中で食事の時間が来たら、読み聞かせを中断させられて翌日回しにさせられるほど。検察官だからといってルール破りを容認するとは思えない」というのだ。

 今のところ真相は明らかになっていないが、いずれにしてもこの記事、社会面での小さな扱いだったが、刑事弁護にかかわる法曹関係者の関心を引いたのは間違いない。

●検事に戻れない

 その羽生、劇中ではいとも簡単に検事に復帰しているが、現実に一度検事を辞めて弁護士登録をした後で、簡単に検事に戻れるということはあり得ないらしい。

 そもそも羽生は古美門事務所に研修に行っていた設定になっている。検事が任官してから弁護士事務所に出向になるということは現実にもある。裁判官、検事、弁護士の間では一応人事交流があり、裁判官や検事が弁護士事務所に出向になったり、検事が裁判所に出向になったりすることはある。

 ただ、期間は基本的に2年。ドラマの中では、羽生検事はそんなに長期間だった印象は受けない。しかも羽生検事はその後まもなく検察を辞めて弁護士事務所を創設している。検事が弁護士事務所に出向する際は、いったん退職して国家公務員ではなくなった上で弁護士登録をするという手続きが取られるが、あくまで出向なので事務所を立ち上げるなどということはあり得ない。

 出向ではなく本当に退職して、しばらく間を置いて再び検事として採用されるということも、可能性ゼロというわけではないが現在ではほぼない。かつて検察の人気がなく、人手不足だった頃は、出産で一度退職した女性検事が復帰したり、司法修習時の教官の口利きで弁護士が検事に転身するということもあったようだが、今となってはそれもないらしい。

 以上、『リーガルハイ』の“揚げ足取り”をしてきたが、法律監修の2人の弁護士には、番組の感想やら、プロの法律家としての葛藤の有無やらをぜひ聞いてみたい気がする。
(文=伊藤歩/金融ジャーナリスト)

BusinessJournal編集部

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