任天堂「みまもり Switch」への注目高まる…子どものゲーム利用を親が制限、依存症を防ぐ
「思春期」が最大の関門に
「東京ゲームショウに来る親子連れ」といって、どんな人たちを想像するだろうか。
私もエンジェルズアイズの活動に参画しており、ゲームをする際の親子の約束づくりの啓発を会場で行っていたが、来場者親子の雰囲気は「子どもや教育を気にかけている感じの親とその子」という感じで、ちゃんとしていた。
そもそも、「ゲーム廃人」クラスの親なら子どものためにつくられたファミリーゲームパークなどに来ず、自分だけ一般ブースに行くか、あるいはゲームショウに行かずに家でゲームをしているだろう。
約束づくりのシートを配布した際も、すでにそういった約束事を親子で取り交わしている、と答えた家も多かった。この「ちゃんとしている」感じは、来場者の年齢層によるところも大きい。ファミリーゲームパークにいる子どもの大半は小学校低学年以下と、まだ幼かった。このくらいなら、まだ親の言うことを聞けるだろう。やはり、小学校高学年から中学校にかけての「思春期前~思春期」をどう乗り越えるか、なのだ。
思春期の子どものネットやゲームの依存で悩む親の声を聞くと、やはり「約束」を取り決めていなかったり、「約束」を決めたが、なし崩しになり意味をなさなくなったりしてしまっているケースが多い。約束は大切だ。そして、約束をするだけでは意味がなく、実際に約束が守られているのか定期的に確認したり、年齢に応じて約束を修正したり、機能で制限できるフィルタリングと並行させるなど、約束を長期にわたって守る仕組みを構築することで、ようやく約束を結んだと言えるのだろう。
依存の「早期予防」が報じられない理由
ゲームに限らず、どの依存でも「いかに依存していることに早く気づき、予防策を打てるか」が大切だ。症状が重くなり、社会生活を送れなくなるほど重度化すれば回復にも時間がかかる。「約束」も「フィルタリング」も、「このままではまずい」といち早く気づくための役割を果たす。
しかし、この「早期対策をして予防する」というのは、非常に地味で地道で「映えない」という問題がある。たとえば、マスコミ映えする「依存」の取り上げ方といえば、やはりネットやゲームでどう見ても社会生活を送れなくなったような人による、壮絶な体験談だろう。
私自身、ネット依存経験があり、体験談を著作にしたことが縁でテレビや雑誌、新聞に紹介されたことがあるが、私は依存の期間はさほど長くなく、依存により借金したり、健康に大きな被害が出たり、家族と断絶したり、などの経験はない。あるテレビ番組の制作者は、私の依存経験は「映え」が足りないな、と困った様子に見えた。
もちろん、人を振り返らせるような伝え方の工夫は必要だ。現に、みまもり Switchの紹介動画はクッパ親子を出演させることで、ゲーム利用を制限するアプリにもかかわらず、ぐいぐい子どもを引き寄せていた。
これは自省を兼ねてだが、依存対策にかかわる少なくない人が「自分たちのしている行動は正しく、社会的に意義がある」だけで満足してしまい、伝え方の工夫が足りていないという問題がある。ただでさえ、依存対策は「人がどっぷり利用しているものに水を差す行為」なのだ。
しかし、「依存者=社会生活を送れないくらい重度な人」でないと「映え」ない、というかたちでばかり依存が取り上げられると、結局大勢の依存予備軍たちは、社会生活を送れなくなった重篤な依存者を見て「自分はあそこまでひどくない」と他人事のように思い、その5分後にはまたスマホを「あのサービスが見たい」などの明確な意志もないまま、「何気なく、自動的に」見てしまうのだろう。
その状態は、すでに回復までに地道な努力を必要とする「依存状態」なのではないだろうか。
(文=石徹白未亜/ライター)
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