KDDI株式会社は昨年12月7日、水宅配サービス会社・富士山の銘水株式会社との資本・業務提携を発表した。
KDDIが展開する全国2500のauショップで提供しているショッピングサービス「au WALLET Market」を通じて、富士山の銘水のウォーターサーバー「フレシャス」を取り扱い始めた。フレシャス契約者には、特典として購入の水パック合計額の10%をau WALLET プリペイドカードにチャージするかたちで還元する。
複数あるウォーターサーバーの中でフレシャスを扱うのには理由がある。それは、富士山の銘水が最高品質の天然水を製造から宅配まで一貫して行っているほか、徹底した衛生管理によって安全が確保されているからだ。
富士山の銘水は、宅配水事業大手として2010年11月の設立以来、順調に業績を伸ばしている。双方の合意で資本・業務提携が決まり、15年末までにKDDIの出資が完了した。出資比率などは公表していないが、KDDIから取締役1人を富士山の銘水に派遣する。ウォーターサーバーは富士山の銘水とのレンタル契約になるが、水パックや、サーバーレンタル費、などの料金はKDDIから利用者へ請求する。
KDDIがこうしたライフ関連部門の業態との関係を深めるのは、仮想移動体通信事業者(MVNO)の台頭により、格安スマートフォンに乗り換えるユーザーが増えており、大手携帯電話会社(キャリア)は経営戦略において変化を迫られている事情がある。そのため、各社は春商戦へ向けて戦略を着々と練っている。
さらに、総務省が携帯電話料金の引き下げを要請するなど、価格が下がる一方の電話利用料だけでは今後の十分な成長は見込めないという危機感も強い。そのため、各社は携帯電話以外のサービスと抱き合わせた戦略の打ち出しを強化している。いわば、逆風に押されている大手キャリアの「リベンジ作戦」だ。
こうした動きは、4月から始まる電力小売りの完全自由化をにらんだサービス合戦にも表れている。auの場合、「auでんき」として電気料金とのセット割引のほか、関西電力との提携も検討。また、傘下のジュピターテレコムが始めている大型マンションへの一括受電による電力販売を一般家庭まで広げることなども検討されている。
経営環境の激変が予想されるなか、キャリア各社はさまざまな戦略を今後も打ち出すことが予想され、生活まわりのサービス提供の充実・強化が図られそうだ。
(文=編集部)