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小笠原泰「コンピュータ技術の進歩と日本の雇用の未来を考える」

Suica普及の本当の理由…駅員の業務が急速に消失 機械による人間の代替が加速化

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

 局面数が10の120乗のチェスで、世界チャンピオンだったガルリ・カスパロフがIBMのチェス専用スーパーコンピュータであるDeep Blueに敗れたのは1997年。そして将棋の世界でAIソフトにトップレベルのプロ将棋棋士である佐藤慎一四段が敗れたのが2013年である。その間に16年を費やしたが、将棋から囲碁までは3年足らずしかかかっていない。この技術進歩の加速化は、大方の予想をはるかに上回るものであった。

 余談であるが、コンピュータ将棋の立役者である公立はこだて未来大学の松原仁教授は2015年10月、「羽生さんとの対局が実現していないのは残念だが、数年後には人間がまったく相手にならなくなるのは確実で、人間との対決を掲げたコンピュータ将棋開発の時代は終わったと考えている」と述べ、コンピュータ将棋の目的は達したという終了宣言を出している。これによって日本の将棋が、コンピュータチェスの優位によって大きく変わったチェスとは異なる道を歩むことになるかは、興味のあるところである。

 将棋にせよ囲碁にせよ、ルールのあるゲームの世界の話とはいえ、高度で複雑であると人間が自負していた行為をAIソフトが代替できることを証明したわけである。車の運転も、非定型で定性的かつ複雑な判断を必要とする人間の行為であると思われていたので、自動運転も一昔前までは夢想だったが、ここ数年で急速に現実味を帯びてきている。

 想定を超える速さで、AIにはできないと思われていた行為が可能になってきている。この技術進歩の加速化がもたらす予測不可能性が、人間が危機感を募らせる原因のひとつである。

ユーザーサイド主導の技術進歩の加速化

 この技術進歩の加速化を抑えることは、できるのであろうか。歴史を振り返ると、かつては地方自治体に象徴されるように、労働組合が反対するという構図で機械化がなかなか進まなかったということはあったであろう。

 鉄道の磁気記憶型切符による改札自動化も、特にJRでは組合の反対もあり、普及には時間がかかったといわれている。しかし、磁気記憶型切符に代わる、関東圏のSuica、Pasmoに代表される非接触型ICカードは急速に普及し、非接触ICカード専用の自動改札の普及も急速であり、現在切符を購入する機会は一気に減少している。

小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

1957年生まれ。東京大学卒、シカゴ大学国際政治経済学・経営学修士。McKinsey&Co.、Volkswagen本社、Cargill本社、同オランダ、イギリス法人勤務を経てNTTデータ研究所へ。同社パートナーを経て2009年より現職。主著に『CNC ネットワーク革命』『日本的改革の探求』『なんとなく日本人』、共著に『日本型イノベーションのすすめ』『2050 老人大国の現実』など。
明治大学 小笠原 泰 OGASAWARA Yasushi

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