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小笠原泰「コンピュータ技術の進歩と日本の雇用の未来を考える」

Suica普及の本当の理由…駅員の業務が急速に消失 機械による人間の代替が加速化

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

 鉄道会社にとって非接触型ICカードのほうが、接触型の切符よりも改札機のメンテナンスコストは安く、多くの鉄道会社の相互乗り入れを前提とするなかで精算業務のコストも大幅に安い。非接触型の料金を接触型より安く設定している点も普及の後押しをしているが、それ以上に大きな要因は、切符購入の手間を省き、電子マネーとしても使える非接触型が利用者にもたらす利便性の飛躍的な向上であろう。

 最近、駅の券売機の数は減少しているようで、その主たる機能はカードへのチャージに移行するであろう。今後は、スマホを使ってのインターネット上での自動チャージに移行していくと思われる。いずれにしても、駅における人間が行う改札関連業務は急速になくなってきている。

 Suicaなどにみられるように、電子マネーとの機能融合・複合化による利便性の向上によって、ひとつの機能代替えは複合的な機能と利便性を利用者にもたらすので、単機能に従事する労働者は代替えされやすい。最近は駅の売店でもSuica利用のセルフレジが登場している。つまり、変化の加速化は、技術だけではなくユーザーサイド主導の加速化もあることを念頭に置くべきであろう。

雇用喪失が加速化するという時間的恐怖心

 経営サイドが、この流れに抗することは非常に難しい。なぜなら、顧客の利便性向上は企業にとって死活問題なので、生き残るには経営サイドも変化を加速化せざるを得ないからだ。進歩する技術によって顧客のニーズを満たし、顧客の利便性を高めることの背後には、当然ながら既存の雇用の喪失がついて回るわけである。

 ここで取り上げた技術革新の加速化であるが、この技術革新がコンピュータ技術に支えられていることを考えると、すぐに加速化が終焉することを期待することは少々楽観的といえるであろう。コンピュータ技術の飛躍的な革新を支えているのは、CPU、ストレージ、ネットワークの飛躍的性能向上を可能にした、「半導体の集積密度は18~24カ月で倍増する」という「ムーアの法則」である。これは米インテル創設者であるゴードン・ムーア博士が1965年に経験則として提唱した法則で、これを半導体集積度という観点からとらえると、確かに微細化技術はその限界に達しつつあり、2020年代には微細化すればするほど性能が向上するという単純な構図を描きづらい領域に達するであろう。

小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

1957年生まれ。東京大学卒、シカゴ大学国際政治経済学・経営学修士。McKinsey&Co.、Volkswagen本社、Cargill本社、同オランダ、イギリス法人勤務を経てNTTデータ研究所へ。同社パートナーを経て2009年より現職。主著に『CNC ネットワーク革命』『日本的改革の探求』『なんとなく日本人』、共著に『日本型イノベーションのすすめ』『2050 老人大国の現実』など。
明治大学 小笠原 泰 OGASAWARA Yasushi

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