ゲーム業界に激震が走っている。
人気FPSオンラインゲーム「レインボーシックス シージ」(略称『R6S』、Ubisoft)などの世界大会で活躍していた日本最大級のプロeスポーツチーム「野良連合」の代表オーナーKizoku(本名:西 泰弘)氏が30日夜、突如辞任を表明した。
Kizoku氏は自身のTwitter公式アカウントで以下のように発表した。
「今回の一件で、私個人に未熟な部分があり、野良連合のイメージを著し低下させ、スポンサー企業の皆様、eスポーツファンの皆様、そして何より野良連合のために視力を尽くして戦ってくれた選手たちに多大な迷惑をかけてしまったことは、疑いようのない事実です。まだまだこのチームとともに、先頭に立って頑張っていきたいと思っておりましたが、自らの未熟さを真摯に受け止め、代表を辞任することと致しました」(原文ママ)
野良連合は日本のeプロスポーツ団体の草分け的な存在で、前出のR6Sのほか、「エーペックスレジェンズ」「ヴァロラント」「フォートナイト」「ウイニングイレブン」といったオンラインゲームのプロチームを所有。いくつもの世界大会にチームを送り出している。また日本のeスポーツの活性化推進事業として、TV出演やeスポーツ専門学校などへの参画による若手育成などを多角的に手がけている。
Twitter上を中心に、野良連合所属選手の給料不払い疑惑が噴出
そんな団体の代表が辞任に至ったという「今回の一件」や「私個人に未熟な部分があり」とはいったいなんなのか。発端はTwitter上での「炎上まとめ投稿」などを行っている滝沢ガレソ氏が26日、野良連合のチームメンバーに対する賃金未払い疑惑を投稿したことだった。同氏やフォロワーなどが事実関係を検証していたところ、Kizoku氏が未成年者への飲酒強要や違法なパパ活などを行ったのではないかとの疑惑も噴出。Twitter上でKizoku氏に対する批判が殺到していた。詳しい一連の炎上に関する経緯は滝沢氏のnote上のブログ『「野良連合」に何が起こったのか – 炎上最前線のノンフィクションルポ』でまとめられ、現在も拡散している。
一方、Kizoku氏は昨日の辞任表明の際、「私個人のプライベートにおける未熟さや過ちがあったことは疑いようがなく、改めて事実関係を皆様に説明し、謝罪しなければならないと思っております。他方で、一連の騒動の中にはほとんど事実無根ともいえる情報が拡散公開されているのも事実であり、現在、解決に向けて専門家を通じて動いている関係上、すべてのことをここで公にすることはできません」と弁明。
その上で、「騒動の原因の一部となっております給与未払い、野良連スキンの販売収益の私的利用については、事実無根であり、 野良連合の活動収益はチームの活動費用とさせて頂いており、現選手の配布へはもちろんのこと、夫婦で暮らしている選手の家賃、 選手をやめてストリーマーになったメンバーの給与等に充当させていただいております」などと給料未払いの件に関しては否定した。一方で、未成年者への飲酒やパパ活についての言及は見当たらなかった。
公式HPからコナミ、産経新聞などのスポンサー名が消える
野良連合ホームページにはOMEN、CORSAIR、森永製菓、産経新聞デジタル、コナミデジタルエンターテイメント、オーディオテクニカ、LinkedBrainなど、国内外の有名企業が公式スポンサーとして名を連ねていたが、一連の騒動が発生した26日から、同連合のホームページからは社名が次々に消え、27日までにすべてなくなった。ネット上では、一連の炎上騒動を受け、スポンサーが引き上げたのではないかとの指摘もあった。
当サイトが複数のスポンサー企業の広報担当者に事実確認を行ったところ、社名を伏せることなどを条件に3社が回答。「その案件に関しては何も答えられない」「そもそも9月までの契約だった」「まったく影響がないとは言えないが、9月までの契約だった」との見解を示した。
大手ゲームメーカー関係者は次のように語る。
「eスポーツの選手は未成年を含む若い方が多いです。Kizokuさんがプロeスポーツ選手という職業を作り出すという意味で、大きな役割を果たしたことは確かです。しかし万が一にも、未成年に対する飲酒強要や性的な金銭取引、不当に未成年を働かせていたことなどが事実となれば、日本国内の保護者がeスポーツを見る目は厳しくなるでしょうね。また児童の権利にとりわけ厳しい欧米でも大きな問題になります。
そもそもeスポーツの本場は欧米です。未成年者への不適当な行為は、日本以上に批判の対象になります。何が事実無根で、実際に何がって、何を理由に辞任されることになったのか。『悪い噂が立った』だけなのなら、辞任する必要はありません。むしろ経営者として、風評に立ち向かうべきだと思うのですが……。
やっと日本に根付き始めてきたeスポーツ業界が、今回の件で色眼鏡で見られることがないよう、しっかり説明していただきたいと思います」
Kizoku氏のさらなる説明が待たれる。
(文=編集部)