「どうぶつの森」、世界的ヒットの本当の理由…意外なユーザー層?
ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠しているアプリが「スマートフォン(スマホ)に入ったまま」という人も少なくないはず。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉をよく聞くが、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。
本連載では、ダウンロード数だけでは見えない「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。
今回も、同社の事業戦略室室長の岡田雄伸氏に2017年冬(10~12月)を中心にアプリの動向を聞いた。
「どうぶつの森」アプリ、なぜ世界的人気に?
岡田雄伸氏(以下、岡田) 17年冬のゲームアプリで爆発的に伸びたのは、11月に発売された「どうぶつの森 ポケットキャンプ」ですね。世界累計1100万本を超える大人気シリーズのニンテンドー3DS「とびだせ どうぶつの森」のアプリ版です。
――プレイヤーはキャンプ場の管理人として動物たちの集まるキャンプ場を運営していく、というゲームですね。
岡田 「App Ape」が集計したゲームジャンルの日間利用者数ランキングでは、発売初日の11月21日に2位、22~23日に連続1位を記録しています。日本だけでなく、海外の「グーグルプレイ」の無料ゲームランキングでも1位を獲得しています。
――なぜ、ここまで人気があるのでしょうか?
岡田 すでに何作もコンシューマーゲームとしてシリーズ化しているためブランド力があることに加え、過去にプレイしたことのある人が「またやってみよう」という気になる、とっつきやすさがあるのでしょうね。
――前回、「ロシア発のガーデンスケイプが女性に人気」とありました。それと似た“育成”要素が人気なのでしょうか。
岡田 そうですね。ただ、「どうぶつの森 ポケットキャンプ」は育成だけでなく交流要素もあります。バザーのように、自分がゲーム内で収穫したものをゲーム内の露店で友達に売ることもできるんです。「アメーバピグ」【※1】にも近いものを感じますね。
――利用者は女性中心でしょうか?
岡田 やはり女性人気が高いですね。「どうぶつの森」シリーズは初代が発売されたのが01年です。当時から馴染みがあったであろう20~30代女性に、特に人気です。また、レビューもポジティブなものが多いです。発売から3日で14万件超、それも平均4.4と高評価のレビューを獲得しているゲームは、なかなかありません。
――今や多くの人がゲームをしていますから、何をもって「ライト」ユーザーか「ガチ」ユーザーかを分けるのは難しいと思いますが、「どうぶつの森 ポケットキャンプ」のユーザー層はどのような感じなのでしょうか?
岡田 もちろん、利用動向は人それぞれですが、「App Ape」では「そのアプリを使っている人が、ほかになんのアプリを使っているか」という調査もできます。「どうぶつの森 ポケットキャンプ」のユーザーはほかにもゲームをいくつか利用しており、そのなかには「刀剣乱舞」や「A3」といったゲームも見られました。
――2~3頭身のかわいいキャラクターが出てくる「どうぶつの森 ポケットキャンプ」に対して、美少年や美青年が出てくる「刀剣乱舞(実在する刀剣が美少年や美青年に擬人化したシミュレーション)」や「A3(イケメン役者育成ゲーム)」。これらのユーザー層の重なりは意外に思えますが、確かにツイッターを見ると、ガチ系のゲームを“主戦場”にしている人が、息抜きに別のほっこり系ゲームをしているケースはたまに見かけますね。
意外な人気?もうひとつの「どうぶつ」アプリ
岡田 なお、「どうぶつの森 ポケットキャンプ」と同時期にヒットしたゲームが「どうぶつタワーバトル」です。こちらは図の通り、さまざまな動物を対戦で積み上げるパズルゲームです。
――「どうぶつの森」と比べて、シンプルなゲームですね。
岡田 「どうぶつタワーバトル」は17年4月に公開されたゲームアプリで、開発しているのは個人デベロッパーのYuta Yabuzakiさんです。17年11月下旬頃からSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で拡散し、一気に人気ゲームになりました。
「どうぶつの森 ポケットキャンプ」のリリースに合わせて「どうぶつ」で検索した人が「どうぶつタワーバトル」を見つけて、シンプルでユニークな画面を拡散し……となっていったのではないでしょうか。
――思わぬ「どうぶつ」需要だったのですね。確かに画面がユニークですし、「ツイッターでつぶやいたら興味をひけそう」と思わせますね。
岡田 この「どうぶつタワーバトル」の盛り上がりをニュースサイト「ねとらぼ」が12月3日に取り上げ、その記事が「ヤフーニュース」のトピックになった、という流れです。
――SNS→ネットニュース→ヤフトピ、とスターダムを駆け上がったんですね。
紅白アプリ、利用者が半分以下に
――年始では、『NHK紅白』のアプリの利用動向についてもうかがっています。紅白アプリは視聴者投票や、好きな歌手を登録しておけば出演前に通知してくれるといった機能がありますが、17年の紅白アプリの利用動向はいかがでしたか?
岡田 昨年は30~40代女性の利用が伸びました。今年引退を発表している安室奈美恵さんの効果が大きかったのでしょう。
なお、昨年と一昨年ではユーザーの性年代が大きく変わっています。17年は30~40代女性が多かったのですが、16年は20代男性が多かったんです。また、16年から17年で利用者は半分以下に減りました。
――17年の『紅白』は安室さんが出ていたのに、なぜなのでしょう?
岡田 これは出演者の違いが大きいですね。16年は『ラブライブ!』の声優ユニット「μ’s」が出演しており、ファン層である20代男性が反応したのでしょう。
――16年から一転、17年はアニメ・声優といった“オタカラー”がなくなった『紅白』でしたね。
岡田 紅白アプリは、機能がどうというよりも出演者によって利用動向が左右されますね。
――ありがとうございました。
ゲーム依存は病気?WHOが認定へ
世界保健機関(WHO)が、「ゲーム依存」を病気の世界的な統一基準である国際疾病分類(ICD)に盛り込む方針であることが年初に報じられた。それから間もなく、アメリカや日本のゲーム機メーカーやソフトウェア会社による業界団体「エンターテインメント・ソフトウェア協会」(ESA)がWHOの発表に異議を申し立てている。
ESAによると、「ゲームは依存的なものではなく」、また「ゲーム依存を病気として定義することで、うつや社会不安障害といった精神疾患がささいなものと位置づけられてしまう」とあるが、言い分としては苦しい。
「ネット(ゲーム)依存だから、ネットやゲームをやめれば解決」という簡単な話でもないところが、依存の難しさだ。特に子どものネット依存では、問題の大元は家庭にあり、子どもは息苦しさからネットやゲームに“逃げている”ケースもある。
子どもに限らず、何かから目をそらすためにネットやゲームをしている大人は多いはずだ。命綱がそこだけになった人から命綱を取り上げては反発しか生まれないだろうし、何より、何かから目をそらしてホッとする時間は、生きていくために必要だ。しかし、その時間が、日がな一日、そして1年中になっていったら、まずいだろう。また、時間が奪われることも長期的に見れば大問題だが、「課金」がやめられない苦しみは、今日明日の生活を直撃する。
本当はやめたい(減らしたい)のにネットやゲームをやめられない人のために、WHOの取り組みに期待したい。
(文・構成=石徹白未亜/ライター)
【※1】
サイバーエージェントが提供しているサービス。アバターをつくり仮想空間で交流する。
【参考資料】
『「どうぶつタワーバトル」ストアランキングで1位獲得!1週間で人気が急上昇したのはなぜ??』(App Ape Lab.)
『任天堂、DeNA「どうぶつの森ポケットキャンプ」世界同時ヒット!!!各国ゲームランキング1位獲得』(App Ape Lab.)
『ネットゲーム依存症、業界団体が反対声明 WHOに異議』(朝日新聞デジタル)
『節ネット、はじめました。 「黒ネット」「白ネット」をやっつけて、時間とお金を取り戻す』 時間がない! お金がない! 余裕もない!――すべての元凶はネットかもしれません。
『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。 会話術を磨く前に知っておきたい、ビジネスマンのスーツ術』 「使えそうにないな」という烙印をおされるのも、「なんだかできそうな奴だ」と好印象を与えられるのも、すべてはスーツ次第!