アズールレーン、なぜ20~30代男性の間で爆人気?
ダウンロードしたものの、数回使っただけで休眠しているアプリがスマートフォン(スマホ)に入ったまま」という人も少なくないはずだ。テレビCMなどでは「数百万ダウンロード突破!」と威勢のいい言葉をよく聞くが、ダウンロード数ではなく、実際にどんなアプリがどの性年代にどのくらい使われ続けているのか。
本連載では、そんな「アプリの利用率」をモニターの利用動向から調べるサービス「App Ape」を提供しているフラーに、四半期ごとに人気アプリの実態について聞いている。
今回も、同社の事業戦略室室長の岡田雄伸氏に2017年夏(7~9月)を中心にアプリの動向について聞いた。
中国発の「アズールレーン」、なぜ人気急上昇?
――毎回、その時期を象徴するアプリを紹介していただいていますが、以前に挙がった「Abema TV」「日経電子版」「ポケモンGO」「DELISH KITCHEN」「kurashiru」「ピッコマ」「GANMA!」は、すべて「テレビCMを流している」という共通点があります。「ポケモン」や「日経」はすでに大きなブランドとして存在していましたが、それ以外の新サービスは積極的なテレビCMで知名度を大きく上げた印象です。そこで、今回は「CMを打たなくても伸びた」アプリについてうかがえればと思います。
岡田雄伸氏(以下、岡田) 直近では、ゲーム「アズールレーン」が目覚ましいです。日本での正式リリースが9月19日になり、まだ1カ月たっていないのですが(※取材時点)、急激にユーザー数を伸ばしていますね。ゲームの課金やダウンロード数のランキング上位はおなじみのタイトルが占拠するなかで、急上昇しています。
――グーグルのアプリ提供プラットフォーム「グーグルプレイ」の10月22日の動向を見ても、アプリの課金ランキングである「売上トップのAndroidアプリ」では「Fate/Grand Order」「モンスターストライク」「リネージュ2 レボリューション」などのキラーコンテンツが並ぶなかで、「アズールレーン」は6位と健闘していますね。「アズールレーン」は、どのようなゲームなのでしょうか。
岡田 戦艦を美少女に擬人化したゲームで、中国企業のYostarが提供しています。
――中国メーカーのゲームですが、日本の声優がキャラクターに声を当てているんですね。「世界の戦艦が美少女に」というのは、すでにある人気ゲーム「艦隊これくしょん」とかぶりますが。
岡田 「世界の戦艦を美少女に擬人化」というコンセプトは共通していますが、シミュレーションゲームの「艦隊これくしょん」とは異なり、「アズールレーン」はシューティングです。ゲーム性は異なります。
さらに、キャラクターごとに「いいね」で評価したり、部屋を設計して、そこに自分のお気に入りキャラクターを住まわせたりせるなど、よりキャラクターにスポットを当てたゲームになっています。
――人気ゲームにはRPGやシミュレーション、パズルが多いなかで、シューティングは新鮮ですね。
岡田 テレビCMなしで短期間でここまで伸びたアプリは、ゲーム以外を含めても本当に珍しいです。
――「アズールレーン」の利用者の性年代などは、いかがでしょうか。
岡田 リリース直後なので数値としてはまだ粗いのですが、現状では利用者の9割は男性ですね。20代、30代の順で多いです。
女性に人気の「ガーデンスケイプ」とは
――「アズールレーン」は男性人気が圧倒的ですが、女性人気の高いゲームはありますか?
岡田 「ガーデンスケイプ」ですね。こちらはロシア企業のPlayrix Gamesが提供しているゲームです。直近の売り上げでは「アズールレーン」のほうがインパクトがありますが、「ガーデンスケイプ」も超メジャータイトルがひしめくゲームアプリのなかで、テレビCMなしで善戦しています。「ホームスケイプ」という第2弾も出ています。
――「ガーデンスケイプ」のアプリのアイコンは、ニコラス・ケイジのようなヒゲのおじさんがこちらを見て微笑んでいます。美少女がウインクしている「アズールレーン」は日本のゲームと雰囲気が似ていますが、「ガーデンスケイプ」はアイコンだけで海外のゲームだとわかりますね。
「ガーデンスケイプ」は、どのようなゲームなのでしょうか。
岡田 庭づくりのゲームと「キャンディークラッシュ」などのパズルゲームを足したような感じです。パズルゲームパートでステージをクリアし、庭をつくっていくゲームです。このようなゲーム要素は、さまざまな層の利用を広く見込めます。利用者は7割強が女性ですね。
当社のオウンドメディア「App Ape Lab」では、ゲームのパブリッシャーのランキングを定期的に発表しています【※1】。こちらは「ユーザーの課金額」ではなく、それぞれの企業に「どのくらいのユーザー数がいるか」を表したランキングになります。
――1位はLINEですが、納得の結果ですね。
岡田 「LINE:ディズニー ツムツム」など、性別や世代を問わず人気のゲームがありますからね。「ガーデンスケイプ」を提供しているPlayrix Gamesは12位ですが、これはDeNAのユーザー数よりも多いのです。
――DeNAも「ファイナルファンタジーレコードキーパー」をはじめ、人気漫画やアニメのゲームを多数提供していますが、そちらよりもPlayrix Gamesのユーザー数のほうが多いのですね。
岡田 はい。また、このランキングを見ると、キラーコンテンツの「Fate/Grand Order」を提供しているAniplexは17位で、「ガーデンスケイプ」よりもユーザー数は少ないのですが、課金額を見るとトップなのです。
――必ずしも「ユーザー数が増えれば課金額も増える」というわけではないのですね。Aniplexはソニー・ミュージックエンタテインメントの子会社で、大本であるソニーの株価は好調ですが、その要因のひとつとして「Fate/Grand Order」が名指しされていますね。
後編では、引き続き岡田氏に「テレビCMなしで伸びたアプリ」に加えて、「20代男性と30代男性で利用傾向が割れたアプリ」や話題の「ライブコマース」などについて聞く。
(構成=石徹白未亜/ライター)
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