スマートフォン向けタワーディフェンスRPG『アークナイツ』を運営する上海悠星網絡科技有限公司の日本法人Yostarが、24日に実施した同コンテンツのアップデート内容が物議を醸している。高レアリティ狙撃キャラクター・プラチナのCVを担当していた人気声優の茅野愛衣さんが降板し、北島瑞月さんが代わりに登板することになったのだ。これまでの音声データも北島さんにすべて一新された。
Yostarは「開発の要望により」と理由を説明しているが、インターネット上では「茅野さんが靖国神社へ参拝したことをラジオ番組で明らかにしたことに対する中国国内の抗議活動が関係している」などと指摘されている。
茅野さんの靖国参拝と中国での炎上騒動に関しては日刊サイゾーで、ライターの廣瀬大介氏が執筆した記事『「出演作品をすべて削除する!」人気声優の茅野愛衣が中国との歴史問題で大炎上! 中国国営メディアも煽り報道』(今年3月6日に公開)で詳報している。
騒動に発展したことに対し、茅野さんはTwitter公式アカウントで以下のように謝罪していた。
2月11日に公開いたしました「茅野愛衣のむすんでひらいて」第152回につきまして、関係者で検討を重ねた結果、該当の動画を非公開とさせていただきました。
— 茅野愛衣 10周年オフィシャル (@kayanoai_10th) February 17, 2021
私どもの認識不足によりファンの皆様にご迷惑をお掛けしたことをお詫びいたします。
出演するゲームのCV表記の削除は別会社のコンテンツにも波及
一方、中国国内の反発は収まらず、6月には『アークナイツ』と同じYostarが手がける『アズールレーン』(茅野さんは愛宕役)、上海散爆網絡科技有限公司・サンボーン運営の『ドールズフロントライン』(同、Kar98k役など)で茅野さんのCV表記の削除が行われた。また、『原神』などで知られるMiHoYoが運営する『崩壊学園』(同、蓬莱寺九霄役)でも茅野さんの音声データが差し替えられた。
中国ユーザーの“炎上の基準”はどこにあるのか
茅野さんはこのほか、香港HERO Entertainmentなどが手掛ける『パニシング・グレイレイブン』(同、リーフ役)などにも出演しているため、それぞれのゲームユーザーや芽野さんのファンらは降板騒動の拡大を不安視しているようだ。大手ゲームメーカー関係者は話す。
「ゲームメーカーにとって、キャラクターに声を当ててもらうのが誰なのかはとても大切です。“特定の声優さんを推しているファン”がたくさんいらっしゃいます。その“声優さん”が出ているから、そのゲームをプレイし、担当するゲーム内のキャラクターをゲットするためにお金をかけてガチャを引き、キャラクターの衣装を購入されるからです。
茅野さんはゲーム以外でも、人気アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』の本間芽衣子役、『ギルティクラウン』の楪いのり役などで国内外に多くのファンを持つ、日本のアニメ・ゲームを代表する声優さんのひとりです。
政治家の方々はまだしも、アイドルや声優さんがこうした政治的なトラブルに巻き込まれることになるとは……。確かに今回のラジオ番組に関しては、声優事務所さんなどの責任を問う声も聞かれます。
一方で、どういう行動が中国のユーザーやファンを怒らせてしまうのか、法律などで明文化されているわけでも、ガイドラインで明示されているわけでもないのも確かなのです。明確にナチズム、日本の戦前の帝国主義、軍国主義を賛美したりするのは当然アウトなのは理解できます。
しかし、中国にとって先の大戦の戦争被害を彷彿とさせる歴史的な日付や事物などをすべて把握し、気を付けていたとしても、見方によってはアウトだと言えることは多々あるのではないでしょうか。このところ、その基準を見極めることが難しくなっている気がします。
業界としてもできる限り、こうした政治的な問題に踏み込まないよう、キャストや作品の描写、キャラクター設定を行うよう努力はしているのですが……。一般論として、日本では思想・信教・信条の自由があり、スタッフやキャストの内心や個人的な動向まで管理することはできないと思います。仮に、靖国神社に個人的に参拝したいというキャストさんがいたとしても、止めることはできません。当人がSNSなどで大ぴっらに公開しなくても、その姿を第三者が写真に撮ってSNSで拡散し、中国で炎上ということだってあると思います」
最近では、ソニーの中国法人の索尼中国が日中戦争の発端となった盧溝橋事件の日に新製品を発表しょうとしたとして、中国当局から100万元(約1770万円)の罰金を科されたことは記憶に新しい。中国での展開と協業が常態化する中、多くの日本企業が難しいかじ取りを求められている。