約40万の取引企業、1億5000万人の利用者を持つとされる「Buy Now Pay Later」(BNPL)決済大手、Klarna(クラーナ、本社:スウェーデン)は23日、公式サイト上で同社の「全世界の労働力の10%を削減する」と発表した。発表は同社CEOのSebastian Siemiatkowski氏の署名で、タイトルは『Company announcement from CEO Sebastian』とされていた。同社の総従業員数は約7000人とみられている。
Siemiatkowski氏は声明で、昨年、事業計画を策定した後に世界情勢が激変したことに触れ、「ウクライナで悲劇的で不必要な戦争が繰り広げられ、消費者心理の変化、インフレの急激な上昇、非常に不安定な株式市場、不況が見られました。これらは、激動の年の始まりを示しています」と述べた。そのうえで「適切なことに焦点を当てた適切なチームがあるか」「適切な場所に適切な人材がいるか」という観点から、「(自社の)組織を再評価することにした」とし「社内の約10%が影響を受けることになる」と表明した。
今後、「影響を受ける従業員」には数日以内に個別面談の連絡を送付する予定で、「可能な限り最善の方法で、すべての人をサポート、ガイドする」「経営陣やすべての上級管理職とともに、私は友人や同僚が去るのを見て深く悲しんでいる」などと述べた。
コア利用者の若者を戦争不況とインフレが直撃?
BNPLとは、「今買って、あとで支払う」の略で、クレジットカード不要の決済方法。消費者と小売店の間に立って、消費者が購入時に「BNPL事業者決済」を選択すると、クラーナなどの事業者が代金を立て替えて小売店に支払う。小売店は消費者の決済手数料をBNPL事業者に支払う。小売店は消費者に商品を発送し、消費者は一括もしくは分割払いでBNPL事業者に代金を「後払い」するという仕組みだ。
分割払いが可能な点、決済手数料を加盟店が負担する点などから注目を集め世界各国のECサイトなどで利用されることが増えていた。クラーナのほか、同業者として米のAffirm、オーストラリアのAfterPayなどが知られている。
クラーナは昨年6月、ソフトバンクグループの「ソフトバンク・ビジョン・ファンド2」などから6億3900万ドルの調達を発表し、企業価値は460億ドルとなっていった。しかし米ウォールストリートジャーナルは今月19日、記事『SoftBank-Backed Fintech Giant Klarna Looks for New Funds at Lower Valuation』で、「昨年6月の3分の1にあたる300億ドルで企業価値を評価する新しい資金調達を検討している」などと報じていた。
一連の情勢について、日本国内の大手情報通信業関係者は次のように語った。
「欧米の研究者レポートや一連の報道などを踏まえると、BNPLの主な利用者層である若年層の“信用性”の低さがネックになっているようです。『高額商品をBNPL決済で商品購入した若年層の支払いの遅れが、クラーナなどの決済事業者の業績に影響を与えている』などと欧米の報道では指摘されています。コロナ禍とウクライナ戦争に伴う世界的な物価高騰や賃金カットなどの煽りを受けやすいのは、どこの国でも同じ若年層です。
手軽な決済方式ではあるもののクレジットカード決済と同様、利用者はBNPL決済事業者に借金をしている形になります。借金が返済されなければ、この事業は成り立ちません。先週には動画配信大手のネットフリックスの従業員解雇報道もありました。IT業界も影響を受けています。クラーナだけではなくAffirmも今年の株価は下落傾向にあります。フィンテックの巨人と呼ばれた企業群が、ここにきて苦境に立たされている状況に戦慄しています」
(文=Business Journal編集部)