国民生活センターは3月15日に「糖質を低減できるとうたった電気炊飯器の実際」と題した発表を行い、炊飯時に白米の糖質を低減できるとうたう「糖質カット炊飯器」に対する注意喚起を行いました。
厚生労働省「平成30年版 厚生労働白書」の「糖尿病患者数の状況」によると、「糖尿病が強く疑われる人」と「糖尿病の可能性が否定できない人」の推計人数は、ほぼ右肩上がりになっています。
ダイエットブームのなかでも「低糖質ダイエット」は、特に長く人気のダイエット法ということもあり、「糖質をカットできる炊飯器」という新機軸が注目され、製品も増えてきました。しかし、国民生活センターによると、2017年度からの約6年間で糖質カット炊飯器について250件の相談が寄せられており、そのなかには「表示通りに糖質がカットされるのかが疑わしい」「糖質カット炊飯器を使用しているが血糖値に変化がない」「説明書通りに炊いたが、おかゆだった」といった内容もあるとのことでした。
そこで「糖質カット」を謳う炊飯器6メーカー・6機種をテストしたところ、確かに糖質低減効果はあるものの、その多くは製品情報に表示されていた最大の割合には大きく及ばなかったとのことでした。
今回テストが実施されたのは、以下の製品です。
1.AINX「糖質カット炊飯器(AX-RC3)」(「最大33%カット」と広告表示)
2.アイリスオーヤマ「IH ジャー炊飯器 5.5合(RC-IJH50-W)」(「約20%または約10%カット」と広告表示)
3.ウィナーズ「ヘルシーライスクッカー(RHR-1)」(「最大3分の1カット」と広告表示)
4.ソウイジャパン「糖質カット炊飯器(SY-138)」(「最大54%カット」と広告表示)
5.forty-four「LOCABO(JM-C20E-W)」(「最大45%カット」と広告表示)
6.ベルソス「糖質カット炊飯器(VS-HI01BE)」(広告表示なし)
これらの機種は、以下のようなタイプとされています。
(1)一般的な炊飯器と同様の仕組みを用いるもの(アイリスオーヤマ)
(2)釜の上にトレーを設置し、糖質を含んだ煮汁や蒸気となった水分をためるもの(AINX、ベルソス)
(3)2種類の釜を重ねて小さな穴のある上の釜から糖質を含んだ煮汁を下部に排出するもの(ソウイジャパン、forty-four)
(4)2と3を併用したもの(ウィナーズ)
それぞれに創意工夫を凝らしていたのですが、「糖質何%カット」という広告表示をしていないベルソスを除く5機種のうち、アイリスオーヤマを除く4機種が広告表示を満たさない結果になったとのことです。
アイリスオーヤマは、この発表を受けて公式サイト上にニュースリリースを掲載し、「あたかも当社製品においても広告などの表示よりも低減の割合が低いかのような報道がなされておりますが、そのような事実はございません」と、自社製品の正当性をアピールしました。
ところが、国民生活センターの発表内容では、2つの事実が明るみになりました。
・炊き上がったごはん“100gあたりの糖質”は全機種で低減された
・お米“1合あたりの糖質”は全く変化がなかった
つまり、アイリスオーヤマを含めた全機種で糖質は“ほとんどカットされなかった”ということです。
そのカラクリは次の通りです。
今回テスト対象になった機種では、糖質カット炊飯する場合には、通常炊飯する場合に比べて水を多く加えており、炊き上がりの水分は全機種で1~2割多い結果になったとのことです。
これは、同じ量の炊き上がりごはんを食べた場合は糖質を10~20%程度カットできるものの、炊き上がったごはんを全部食べてしまったら、摂取する糖質はほぼ同じということを示しています。
国民生活センターは消費者へ向けて「同じ量の米から炊いたごはんに含まれる糖質の総量は通常の炊飯の場合と大きな差がみられないため、使用する際は食べるごはんの量に注意しましょう」と、アドバイスしています。
主食として白米を食べるのであれば、白米を食べる量を減らすか、食品に含まれる糖質の吸収度合いを示す「GI(グリセミック・インデックス)値」が白米よりも低い玄米や大麦、雑穀を混ぜるといった食べ方が、結局は正解なのかもしれません。
(文=安蔵靖志/IT・家電ジャーナリスト)