インターネットの普及で音楽関連サービスは目まぐるしく変化をしている。ネット経由で曲を選んで購入することができるようになったのは、つい最近というイメージだったが、今は月1000円前後でダウンロードし放題というサービスが増えている。これはサブスクリプション型と呼ばれ、海外で普及が進んでいる。
そんななか、アップルが配布しているメディアプレイヤー・iTunesも、5月からiTunes Matchという新たなサービスを開始している。これはパソコンやiPhoneの中にある音楽データをクラウドに転送して保存するサービスだ。
クラウド上に音楽データを保存することで、対応する機器間でデータを転送しなくとも音楽を聴くことができる。ちなみにiTunes Matchに登録できる機器は最大10台で、利用料金は年額3980円となっている。
●iTunes Matchのメリットとは?
大まかに説明すると、iTunes Matchは自分で曲をアップロードする。つまり、すでに購入した音楽をクラウド上で保管することが主な目的である。オリジナル音源の存在を意識しなくてよくなるため、CDやレコードを大量に持っている人は、リッピング(CDなどのデータをパソコンに取り込むこと)した曲がクラウド上で保管されるので、CDをなくしたり破損したりしてしまっても、iTunes Matchからいつでもダウンロードできるという安心感がある。
これはまさに物理メディアからの解放といえるだろう。しかし、CDに比べて音質が下がることは覚悟しなければならないが、単にポータブルオーディオなどのデバイスで再生する程度であれば、これで十分だろう。音楽CDを大量に持っている人にとっては大きなメリットだが、CDを持たないデジタル世代の若者には、あまり利用価値はないのかもしれない。
これに対して、サブスクリプション型サービスでは目的の曲を探し、ダウンロードする。気軽に未体験の曲を試すことができることが大きなメリットだ。なにしろ定額なので、いろいろな曲を手軽に試して聴くことができる。そしてどんなに曲をダウンロードしても、物理的な保管場所を取られることはない。
このように見てみると、iTunes Matchは音楽CDという物理メディアを、クラウド上のデジタルメディアに変えるという面でメリットがあり、時代のひとつのターニングポイントとして重要な役割を果たすことができると考えることができる。
iTunesの登場により、音楽をネットで購入するという大きな変化を市場にもたらしたが、今度はiTunes Matchによって、すでに所持している音楽メディアもネット上に集約させることを実現したといえる。
(文=一条真人/ITライター)