小中学生にはリスクが大きい
「LINEは家族との連絡手段としては便利なのですが、中学生ぐらいまでであれば、使わなくても学校生活に困ることはありません。少なくとも私は、小中学生の子どもたちにとってメリットよりリスクのほうが大きいものだと考えています。確かにLINEを使っていないことでいじめを受けたという話も聞きますが、むしろ私はLINEを使っていることで、自分や友達への“いじめの現場”を画面上でじかに目撃してしまう精神的なダメージや、友達の情報を知っておかなければならないという情報依存による時間の浪費のほうが問題は大きいと思います。LINEをグループで利用する場合、一度開くとしばらく会話の流れを追ってしまいますから、もしそこで自分の悪口が交わされていれば、それをしばらく見続けることになります。自分の知らない所で悪口を言われているという噂を聞くのと、実際に目にしてしまうのでは、後者のほうが精神的に受けるダメージが大きいのは明らかでしょう」(同)
遠藤氏は、LINEなどの通信アプリは子どもの健全な成長の妨げになりかねないと危惧する。しかし、ここまで普及したLINEを強制的にやめさせるのは現実的には難しい。では、子どもはどのように利用していくのがいいのだろうか。
「私はLINEは中学生までは必要ないと考えています。実際に利用していなくても全く不自由していない子はいます。しかし、社会に受け入れられてここまで広まっていることを考えると、子どもたちにとってリスクの大きいツールとはいえ、強制的にやめさせることがいいとは断言できません。勉強する間は他の部屋にスマホを置いたり、機内モードに切り替えるなど集中できる環境を作ったり、テスト前は使わないと決めて親に預けたりと、工夫して使っている子どもも少なくないからです。このように使い分けがきちんとできるようであれば、依存もしませんし、学力や集中力も低下しないでしょう。大事なのは、自分をコントロールしてうまく距離をとりながら利用することだと思います」(同)
包丁を「人殺しの道具だ」と言って発売禁止にできないのと同様、すべてのツールは使い方次第。LINEも正しく使えば人間関係を潤してくれたり、仕事の効率化が図れたりと多くの便益をもたらしてくれる。
だが、不適切な使い方をしたり必要以上にのめり込んでしまえば、便利さは一転して人生にネガティブな要因をもたらすツールにもなり得る。LINEがはらむリスクを理解した上で、使うべきか、使わざるべきかを判断し、使う場合にはどのように利用するのかを慎重に考えなければならない。
(文=日下部貴士/A4studio)