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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

G20で日本が韓国・文大統領を冷遇…半導体材料の輸出規制を強化、韓国通貨危機の懸念も

文=渡邉哲也/経済評論家
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G20大阪サミットでの安倍晋三首相(左)と韓国の文在寅大統領(右)(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 6月28、29日に大阪でG20サミット(20カ国・地域首脳会議)が行われ、無事に終了した。さまざまな分野で各国の利害が対立するなか、どのような声明が出されるかに注目が集まったが、ひとまず無難に決着したといえる。

 米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席による米中首脳会談では、通商協議の再開および華為技術(ファーウェイ)への禁輸の一部緩和が決まるなど、貿易摩擦は一時休戦の様相を見せた。また、トランプ大統領のツイッターに端を発した北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談が実現し、史上初めて現職の米国大統領が南北軍事境界線を越えて訪朝したことも大きな注目を集めた。

 一方で、この事実上3回目の米朝首脳会談が実現する前の段階で、北朝鮮は韓国文在寅大統領を非難していた。米朝が水面下で接触していることを匂わせる文大統領の発言を外務省幹部が否定し、「米朝間の調停役かのように公に振る舞って自らのイメージ刷新を試みている」などと批判、さらに米国との連絡については「韓国を通して進めるようなことはまったくない」と突き放したのだ。

 これは、北朝鮮の「米国とのホットラインを利用するので韓国はいらない」「仲介役のふりをするな」というメッセージだろう。前回の米朝会談が失敗に終わった原因が韓国の介入にあるとの見方を踏まえての動きと思われる。実際、米朝間では事前に親書のやり取りが行われており、韓国の手を借りずとも会談の下地は整っていたといえる。

 また、G20においては文大統領の冷遇も話題になった。日韓間で首脳会談が見送られたばかりか略式会談さえ開かれず、安倍晋三首相は出迎えの際に文大統領とほとんど目も合わさずに数秒握手しただけで終わったのだ。これについて、韓国メディアは「8秒間」と伝えているが、共同通信は「約5秒」としており、いずれにしても異例の短さであることに変わりはない。4月、文大統領はわざわざ渡米したにもかかわらず、トランプ大統領との会談が約2分で終了したことが話題となったが、それを超える冷遇ぶりといえる。

半導体材料の対韓輸出を規制へ

 そして、日本の経済産業省は半導体材料の対韓輸出を規制する方針であることが明らかになった。対象となるのは、テレビやスマートフォンの有機ELディスプレイに使われるフッ化ポリイミド、半導体の製造に使用されるレジストとエッチングガスの3品目だ。

 これまでは手続き簡略化などの優遇措置を取っていたが、7月4日からは契約ごとに審査・許可する体制に切り替えるといい、輸出手続きには90日間ほど要することになるという。許可が下りるかどうかは用途や使用先次第であり、米国のように不許可を前提とした運用も可能となる。今後は、韓国側の出方や対応を見極めながら段階的に締め付けていくのではないだろうか。

 フッ化ポリイミドとレジストは日本が世界の全生産量の約9割を占めており、エッチングガスも約7割を日本が占めるとされる。そのため、韓国のみならず、世界の半導体企業は急に代替先を確保するのは難しい。規制強化により、サムスン電子やLGエレクトロニクスなど韓国の電機産業に悪影響が出ることは必至だ。韓国はサムスングループだけで国内総生産(GDP)の約2割を稼いでいるともいわれており、半導体は輸出産業の中核をなしている。日本からの材料供給が停止されれば、韓国の経済全体が壊滅的なダメージを受けることになるだろう。

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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