一方、一部の業界ではかなり厳しい問題に直面している。
それは、オリンピックの準備期間に東京国際展示場(東京ビッグサイト)や幕張メッセといった大規模展示会場が長期的に利用できなくなってしまうことによる。東京都は10月22日、東京ビッグサイトをオリンピックのメディア施設として全面的に使用すると発表した。幕張メッセについても、競技会場となる予定だという。それも短期間ではなく、特に東京ビッグサイトに関しては19年4月から20年11月までの20カ月もの長期にわたって利用不能になる。
この期間に本来なら何が行われるはずだっただろう。人によって思い浮かぶものは違うだろう。たとえば、コミックマーケット(コミケ)は3回、東京ゲームショウは2回、東京モーターショーも2回の開催期間に当たる。つまり、これらがすべて中止を余儀なくされるのだ。ほかにも、ブランドショップのファミリーセールなども、中止や別会場での開催となるだろう。
そして、企業向けの業界別ビジネスショーなどは、何回中止になるかわからないほどだ。実は大規模展示会場では、一般向けの大きな催事よりもビジネスショーが数多く開催されている。ペット、フード、ネイル、自転車など、個人でも楽しめるようなものも含め、新製品を発表したり、商談の機会を得たり、即売を行ったりする。
またその裏側には、そうした催事を専門に請け負っている企業も多い。イベント出展企業を集める業者もあれば、出展ブースの組み立てや装飾を専門にしている業者もある。それらの企業にとっては、20カ月間仕事が激減することになる。ほかにもコミケや同人誌即売会に並ぶ大量の同人誌を印刷する会社は、事業継続が危ぶまれるほどの大問題になる可能性もある。
地方開催は困難
この問題に関して、すでにビジネスショーを開催する企業や出展者、関連企業などは強く認識している。行政などに対応を求めても、返ってくるのは「地方にある会場が100%稼働していない」という言葉だ。つまり、「東京オリンピック前後くらい地方でやればいいだろう」との思惑だ。なかには、地方開催に同意する人もいるだろう。
しかし残念ながら、実現はかなり難しい。まず、地方には広い展示会場がない。東京ビッグサイトの展示面積は、国内最大の8万平米。幕張メッセが7万2000平米。これに対して大阪にあるインテックス大阪は7万78平米。名古屋のポートメッセ名古屋は3万5000平米。インテックス大阪は比較的大きいが、それでも東京ビッグサイトより1万平米近く狭い。