提言では、解決金制度は「紛争解決の早期化と選択肢の多様化」のための方策のひとつに位置づけられている。申し立てについては労働者側のみに認められており、企業側からこの制度を使うことは想定されていない。一方、労働者側の専門家からは、不当解雇であっても補償金さえ払えば解雇が認められることと同じ結果になるとして「カネで解雇を買う制度」ではないかといった反発も出ている。
解決金制度とは、果たして「カネで解雇を買う制度」といえるのか。事業再生やM&A(合併・買収)を中心に、企業法務全般を手がけるセンチュリー法律事務所の佐藤宏和弁護士に
・解決金制度の使い方
・解決金制度導入のメリット
などについて話を聞いた。
紛争解決の早期化に有効か
–解決金制度は具体的にどのように使われることが考えられるのか?
佐藤宏和氏(以下、佐藤) ここで重要なのは、解決金制度を「紛争解決の早期化」の手段として使うのか、それとも「選択肢の多様化」の手段として使うのかという点です。解雇に関する争いについて、早期解決の手段としては労働審判という制度があります。労働審判では、当事者が裁判所に出向く機会が最大で3回ありますが、現実には最初の1回でほとんど決着がつけられます。
このため、当事者は1回で自らの主張をするよう求められ、労働審判官(裁判官)と労働審判員(使用者側と労働者側の専門家各1名)が双方の当事者から事情を聴取し、解雇無効と認められそうな事案であれば調停という裁判上の和解手続の中で、事案に応じた相応の解決金支払を使用者側に納得させるよう促します。
解雇が行われてから代理人を通じて労働審判を申し立て、裁判所に初めて出向くまで、3カ月程度で紛争が終結するケースも珍しくありません。このように、現行の労働審判でも紛争解決の早期化は“ある程度”実現され、結果として解決金の支払いも行われています。
–労働審判で紛争解決の早期化が実現され、解決金の支払いも行われているのであれば、なぜ解決金を制度として導入する必要があるのでしょうか。