マクドナルドの経営が思わしくない。12年秋にはレジでのメニュー表の廃止が議論を呼び、ポテト全サイズ150円キャンペーンを乱発。12年の既存店売上高が9年ぶりのマイナスとなり、話題を呼んだ。
そんな折に開始された「ENJOY! 60秒サービス」が、飛んで火に入る夏の虫のごとく、炎上の種になっている。1月4日から31日の11時〜14時まで行なわれるこのキャンペーン。同店で会計終了してから商品の受け渡しまで、60秒以内に行なわれなければバーガー類無料券を、60秒以内でもホットコーヒーSサイズの無料券を配布するというものだが、キャンペーン開始直後から、2ちゃんねるをはじめとするインターネット上では、「急ぎすぎてメニューがぐちゃぐちゃ」「サービスの質が低下」などの批判が相次いでいる。
マクドナルド60秒キャンペーン 急ぎすぎてメニューがグチャグチャと話題! ー
ガジェット通信(1月5日)
では、実際のところはどうなのだろうか? 1月10日、都内のマクドナルドに足を運んでみた。
東京メトロ沿線の某駅前にあるマクドナルド。筆者が同店を訪れたのは、昼食にはやや早い11時30分だが、5組ほどの客が並んでいた。それでも、昼時の繁華街やビジネス街に立地する店舗に比べれば、混雑とはとてもいえない状況だ。レジにはパートの主婦と思わしき妙齢の女性が2人、その奥にはマネージャーと思われる若手男性社員。鈍臭そうな印象はなく、どちらかと言えば、それぞれがきっちりと仕事をこなしている様子だ。これは、60秒を越えるためには、かなりの強敵なのではないか……?
敵のレベル(※目視での感想です)を考えると、60秒以上の時間がかかりそうな複雑なメニューをオーダーしてみるという選択肢もあったが、今回は敢えてオーソドックスな「ハンバーガー2個、テイクアウトで」とオーダー。会計が済むと、レジ横に置かれていた運命の砂時計がくるりと回された……。
商品を待っている間に、列の前に並んでいた男子高校生のオーダーが出そろう様子を見ていると、どうも様子がおかしい。彼はチキンフィレオセットを頼んでいたが、砂時計が落ちきっても商品が来る様子はない。クルーも特別にあわてる様子もなく、ようやく注文が出そろったのは、砂が落ちきってから20秒ほどオーバーした後だった。彼は、隣のレジに並んでいた友達に向かって、思わず「やったぜ!」と言わんばかりの喜びの目線を送っていた。
しかし、こちらの注文はハンバーガー2つで合計200円。60秒以上かかると店側は、320円(都内価格)のビッグマックが手に入る無料券を、その客に進呈することになっており、わずか200円でハンバーガー2個にビッグマックまで奪われては、さすがに向こうも必死で阻止するだろう……と、あまり期待せずに待っていた。
だが、「しばらくお待ちください」の声とともに、レジ上にトレーが置かれてから、一向にそのトレーに乗るはずのハンバーガーが現れない。そこまで忙しいようには見えないが……。砂時計が半分以上落ちかけたところで、レジの向こうにようやくハンバーガーが登場した。だが、テイクアウトのためには、紙袋に詰め、さらに紙ナプキンを入れた後に、数回紙袋の上部を折り曲げなければならない。はたして間に合うのか、それとも時間はオーバーか、この時点では五分五分。ガラスに入った黄色い砂は音もせずに舞い落ちる。思わぬ展開に手に汗握る筆者。
注文からすでに40秒が経過。紙袋にハンバーガーを詰めるクルーに対し「急げ! 慌てろ! そしてぐちゃぐちゃにしろ!」と、思わず本音を(心の中で)ぶつける筆者。いまや、本当に欲しいのは美味しいハンバーガーよりも、記事になる美味しいネタだった。そう、私の汚れた浅ましい性根が求めているのは、汚れたハンバーガーだったことに気がついたのだ。
「今はぐちゃぐちゃで無残なハンバーガーがI’m loving it! なんだ!」
だが、そんな心の叫びを意に介すこともなく、丁寧に袋詰めするクルー。注文から67秒後、砂時計が落ちきり、バーガー無料券とともに、きっちりと紙袋に詰められたハンバーガーが手渡された。しかも、ご丁寧にスマイル(0円)までしっかりとサービスされ、ネタ収集に走っていた浅ましい己の気持ちが、さらにみじめなものに。「ぐちゃぐちゃにしろ!」とか思ってすいませんでした。
だが、マクドナルドのキャンペーンが掲げる“60秒以内”に、提供できなかったのは事実。これでいいのだろうか? こうした状況を踏まえて、日本マクドナルド広報部を直撃した。