1月5日、総務省が各種ポイントカードをマイナンバーカードへ一本化することを検討し始めたと報道され、方々で話題が沸騰した。
総務省の仕事始め式で高市早苗総務大臣が指示したという。早ければ来年春に導入したいとの意向を示したが、各種ポイントカードや銀行、図書館、商店街などのカードをマイナンバーカードに一本化するシステムを構築するには、数年はかかる。それを知らずに本気で来春導入を考えているのか、はたまたもうすでに実行に移しているのか、気になるところだ。
総務省は昨年、消費税の軽減税率に関連して、買い物する際にマイナンバーカードを提示することで軽減税率相当分を還元する案を提案したが、その際も国民や識者から買い物のたびにマイナンバーカードを提示することに強い反発が起きたこともあって廃案となった。
とにかくマイナンバーカードを普及させたいとの意向がありありと透けて見えるが、そもそも人に知られてはいけないマイナンバーを、買い物の際に提示するなど矛盾も甚だしい。紛失のリスクなどを考えると、持ち歩くことすらはばかられるものではないだろうか。
また、マイナンバーは社会保障・税金のための制度で、「国民生活を支える社会的基盤として」導入すると内閣は発表している。いきなり制度の趣旨から外れたことを始めようとするあたり、早く普及させようと焦っているのだろう。
報道によると総務省幹部は、マイナンバーカードとポイントカードを統一することのメリットとして、各企業が磁気カードからICチップ入りカードに移すための莫大な投資を行わずに済むと語っている。しかし、そもそも各企業は自社や提携グループ内に顧客を囲い込むためにポイントカードを発行しているのに、統一してしまうとポイントカードを発行するメリットそのものが消失してしまうことに総務省は気づいていないのだろうか。
公共事業に民間企業を参入させる、あるいは公共事業を民営化するのが本来の流れで、民間の事業に政府が介入してもうまくいかないことは自明の理である。
個人情報流出のリスク、システム構築のための無駄な税金支出、国民の購買行動を国が把握することの不気味さなど、早くも国民の間からは批判が噴出している。少なくともインターネットで調べる限り、好意的な意見は見当たらない。マイナンバーカードを国民に無理矢理でも使わせたい、新システムをつくることで管理団体を立ち上げて天下り先を増やしたいという狙いがあるのではないか、との指摘も数多く上がっている。
総務省、ひいては政府の真の狙いがどこにあるかはともかく、マイナンバーが税と社会保障に限定した制度ではないことは確かだ。麻生太郎副総理兼財務大臣兼金融担当大臣が、制度発足から3年ほどしたら銀行の預金口座への紐付けを義務化していくことを検討するとの発言をしたことからもわかるように、今後徐々に適用範囲が広がっていく可能性は高い。国民はマイナンバー制度の方向性を注意深く見守っていかなければならないだろう。
(文=平沼健/ジャーナリスト)