新型コロナウイルスに感染し、闘病していたコメディアンの志村けん(しむら・けん、本名・志村康徳=しむら・やすのり)さんが29日午後11時10分、肺炎のため東京都内の病院で死去した。日本国内に悲しみの輪が広がるなか、世間では「もっと早く手を尽くすことができなかったのか」との疑問の声も聞かれる。
各社報道によると、志村さんが新型コロナウイルスに感染していることが判明し、亡くなるまでの経緯をまとめると以下のようになる。
17日 倦怠感があったため自宅療養。その後、発熱やせきが出始める
19日 呼吸困難に
20日 自宅を訪問した医師の判断で都内の病院に搬送。重度の肺炎と診断
23日 新型コロナウイルス検査で陽性が判明。病状が悪化
25日 港区から新宿の病院に転院し、人工心肺による治療開始
厚生労働省が保健所など関係機関に出している新型コロナウイルス受診の指針では「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く方(解熱剤を飲み続けなければならない方も同様です) 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある方」としている。
志村さんが明確にコロナウイルスに感染しているのがわかったのは、呼吸困難になってから4日目の23日だった。その後、病状が悪化するたびに後手の対応がとられているいるようにも見える。一般的に患者を移動させたり、転院させることは大きなリスクを伴う。患者本人の体力を奪うし、医療従事者の2次感染の危険性も高まる。
明確な治療方法がなく、今は対処療法しかなかったとしても、もっと早期にコロナウイルスの感染を確認し、最初からもっと整った医療体制の元で闘病を続けることはできなかったのだろうか。志村さんは高齢で、肺に基礎疾患もあった。感染症対策のための国の規則があるとはいえ、臨機応変にトリアージ(治療・検査の優先度を決めること)ができなかったのか。
医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は次のように憤る。
「遅すぎます。志村さんは肺に既往症があって、なおかつ高齢でした。重篤化する危険性は高く、コロナの疑いがあった段階ですぐに検査し、適切な医療体制のある病院で治療に専念すべきでした。現場の医師の判断なのか、それとも保険所が即時検査を拒否したのか定かではありませんが、結果として厚生労働省のマニュアル通りに『4日待機ルール』を守って、手遅れになってしまった可能性を否定できません。今回の対応が適切だったのか、しっかり検証すべきでしょう。
たとえ現在、治療法がなかったとしても初期の段階から受け入れ態勢がしっかりしている病院に入院できるかどうかで、患者の負担は大きく変わります。とにかく悪化を食い止めることができれば、臨床試験が始まったインフルエンザ治療薬『アビガン』の投与を試すなど、もっと手を尽くすことができたでしょう」
日本政府と医療界に対して、志村さんの死は大きな宿題を残した。
(文=編集部)