アメリカで2009年に誕生した、一般人が運転する自動車を配車するサービス「Uber」は、今や世界約60カ国、300以上の都市で展開し、15年の配車サービスの売り上げは約1兆3000億円に達した。スマートフォンで手軽に配車できることもあり、利用者は倍々ゲームのごとく毎年激増している。
残念ながら日本では、国土交通省から「白タク行為に当たる」と指摘され、既存のタクシー会社との提携のみに終わっているが、欧米各国では移動にUberを利用することは当たり前となっている。
そんななか、Uberを使った巨大な詐欺事件が発覚し、衝撃が走っている。4月22日付の香港紙アップルデイリー記事によると、中国大陸の詐欺グループが香港のUberドライバーと結託し、多額の乗車料金を詐取していたというのだ。
その手口は次のとおりだ。
まず、香港にいるUberのドライバーにメッセージアプリ経由で「勧誘」のメッセージが送られてくる。そこには「200元(約3500円)払えば、架空の客を運んだことにしてやる」と記載されているのだ。これに応じた悪徳ドライバーは、大陸にいる詐欺グループに「WeChat Pay」などの電子マネーで送金し、架空の送迎場所をやりとりする。
こうして、客を載せていない自動車が、乗車中として香港内を走り回る。たとえば、香港空港から九龍半島東部のホテルを往復した場合、運賃は2000香港ドル(約3万円)となるが、ここからUber側の手数料25%を引いた約2万2500円がドライバーの収入になる。約3500円の投資でこれだけ手にできるのだから、まさに濡れ手で粟だ。
実は大陸にいる詐欺グループが決済に使っているのは盗難されたり、偽造されたクレジットカードだ。詐欺グループが手にするのは1回当たり約3500円だが、香港内では数十人がこの行為に加担して巨額の利益を得ていたことが判明している。Uber香港は、すでに三十数人のドライバーを「営業停止処分」にして調査を開始している。
Uberは乗客・ドライバー双方の安全を確保するため、現金でのやりとりを禁止し、乗客はクレジットカードのみ利用できるルールになっている。こうしたUberの盲点を突いた手口といえるが、「日本での本格的サービスも間近」といわれているだけに、同様の手口が広がらないか、注視していく必要があるだろう。
(文=五月花子)