5月10日未明、「パナマ文書」の内容が「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)のウェブサイトに公開された。パナマ文書をめぐっては、アイスランド首相が資産隠し疑惑で辞任し、イギリスのキャメロン首相も亡父の租税回避疑惑で窮地に立たされている。大騒ぎになっている海外と日本の報道の温度差は明らかだ。
内容が公開された週は日本でも大きく扱われたが、翌週になると清原和博被告の裁判や舛添要一東京都知事の政治資金流用疑惑、東京五輪・パラリンピック招致の2億円ウラ金疑惑などに、すっかりかき消された格好となった。
パナマを含め、タックスヘイブンの利用は決して違法ではないものの、実態がつかみにくく課税逃れであることは間違いない。日本経済新聞などは「節税網 世界に拡大」と見出しを掲げており、最初から「節税」というあまりネガティブな印象を与えない言葉を使っていた。「違法ではない活動をどう追及すべきか」ということで、メディアは最初から逡巡していたように見える。菅官房長官は4月6日に早々と「日本政府としてパナマ文書について調査しない」と宣言した。これについて民進党の岸本周平衆議院議員はこう話す。
「オバマ大統領のセンスの良さは『(租税回避は)合法だから問題だ』と言ったこと。それに比べ、菅長官はセンスがない。菅長官は、自民党や自民党議員に献金している企業や個人が出てきたときに、その人たちが脱税していたわけではないと、予防線を張っていたのかもしれない」
日本の多くのメディアにとっても、パナマ文書で明らかになった大企業は広告のスポンサーだ。これ以上、大騒ぎしても得なことはないと考えても不思議ではない。
報道の自由度は72位
国際NGO「国境なき記者団」(RSF、本部・パリ)が発表した2016年の「報道の自由度」ランキングで、日本は72位だった。RSFは、180カ国・地域を対象に、各国の記者や専門家へのアンケートも踏まえてランキングをつくっている。日本は10年には11位だったが、14年は59位、昨年は61位と年々順位を下げてきた。
1位はフィンランドで、オランダ、ノルウェーが続く。欧米主要国では、ドイツが16位、カナダが18位、英国が38位、米国が41位、フランスが45位、ロシアが148位。ベルルスコーニ元首相のメディア支配が有名なイタリアも77位と順位が低い。東アジアでは台湾が51位、韓国が70位、中国が176位、北朝鮮が179位。最悪の180位はアフリカのエリトリアだった。