中国や北朝鮮の順位が低いのは当然としても、韓国よりも日本が下というのは、驚く人も多いのではないか。韓国といえば、産経新聞が掲載したコラムをめぐって同社支局長が韓国検察から名誉毀損で起訴され、出国禁止処分された14年の事件が記憶に新しい。その韓国よりも下である。実態はともかく、少なくとも海外はそう見ているということだ。
既得権益にしがみつくマスコミ
日本の順位が下がっているのは、自民党の政権復帰、安倍政権の誕生と時期が一致している。実際、RSFのアジア太平洋地区担当、ベンジャマン・イスマイール氏は特定秘密保護法について、「定義があいまいな『国家機密』が、厳しい法律で守られている」としており、記者が処罰の対象になりかねないという恐れがメディアをまひさせていると指摘した。高市早苗総務相の「停波発言」も日本の印象を悪くしている。放送局が政治的な公平性を欠くと判断した場合、放送法違反で電波停止を命じる可能性もあるとした発言だ。
ただ、これによって萎縮するとすれば、放送局や新聞だけではないだろうか。新聞には放送法のような縛りはなく、まったく自由に発言できるはずなのだが、新聞社とテレビ局にはクロスオーナーシップと呼ばれる資本関係があり、結びつきが強い。
また、RSFはこれまでも、日本の記者クラブによるフリーランス記者や外国メディア排除の構造などを指摘してきた。民主党政権誕生以降は、政府の記者会見が一部オープン化されるなど新聞・放送局の独占はなくなったが、大手新聞社は記者クラブの家賃や電気代まで政府に払わせている。既得権益を放そうとはしないのだ。
しかも、日本新聞協会が新聞への軽減税率適用を長年求め続けてきた結果、「新聞の定期購読料」も対象品目に含めると、昨年末に閣議決定された。これで新聞社側は安倍政権に“借り”ができてしまった。ジャーナリストの池上彰氏は、新聞の軽減税率適用は政権迎合につながると指摘している。放送局は弱腰、新聞社は既得権益維持の体たらく、そんな日本のメディアが海外からダメ出しされるのも当然といえば当然なのである。
しかしながら、RSFに少しだけ反論しておくと、日本の雑誌は安倍政権に怯むことはなく、いたって元気だ。たとえば、「週刊文春」(文藝春秋)は現金授受スクープで安倍首相の側近だった甘利明氏を大臣辞任に追い込んだ。これは政権にとってかなりの痛手だったであろう。
なお、この甘利氏に関する情報は当初、大手新聞社にも持ち込まれたが、その新聞社は掲載を断ったといわれている。断った理由は不明だが、新聞社として選球眼が悪いだけでなく、国民に真実を伝えようとしない罪は重い。