米経済誌「フォーブス」(5月28日付)が伝えたところによると、2013年に開港したスリランカのマッタラ・ラージャパクサ国際空港が、閑古鳥が鳴く状態と陥っているという。
この空港はスリランカの南端にあり、同国最大の都市・コロンボから南に約250キロ離れたところにある。コロンボの空港が近いうちに飽和状態になることが見込まれていたことから、2009年に当時のラージャパクサ大統領の決定によって、国の第2空港として建設が進められていった。
開港した空港は、ターミナル面積が1万2000平方メートル、12のチェックインカウンターと2つのゲートがあり、年間乗降客100万人のキャパシティを持つ立派なもの。ところがオープンしてみると、開港当初は1日7便が飛んでいたものの、利用客がほとんどいないため、徐々に定期便が減っていき、今では1日1便と週1便の定期便しかない状態。1日10~20人の乗客しかいないという。
なぜこんな空港ができたのか。実は、この空港のある地域は、建設を決定した当時のラージャパクサ大統領の地元で、ここに空港をつくることを決めたのも彼の強い意向があったからだという。
そして建設費2億900万ドル(約222億8000万円)のうち、そのほとんどともいえる1億9080万ドル(203億4000万円)が中国政府からの融資となっており、建設を請け負ったのも中国の建設会社だったのだ。
なぜ中国が、こんな辺鄙なところにある空港に金を出したのか。
中国政府は現在、ユーラシア大陸の覇権を握るため、未来版シルクロードともいえる経済構想圏「一帯一路」や、同大陸の南側沿岸を結ぶルート、通称「真珠の首飾り」プロジェクトを進めている。ともに、沿岸各国の港に巨大な投資をして、通商および軍事的なルートを確保しようというものだ。
マッタラ・ラージャパクサ国際空港の建設も、それらの一環とみられている。つまりこの空港は、中国の中国による中国のための空港といっても過言ではないわけだ。だから空港の収益性などはスリランカの問題だとして意に介さず、必要になったら中国が自由に空港を使えるようになればいいだけ、というわけだ。しかも、当時のラージャパクサ政権下は親中路線を敷いており、プロジェクトはあれよあれよという間に話がまとまった。
同政権下では、やはりチャイナマネーによるコロンボの港湾開発プロジェクトも承認されている。港の一角には、中華街が建設されるといわれており、同市の中国大使館前で同プロジェクトに反対する市民らによるデモ活動が行われたこともある(参照:『【現地ルポ】スリランカ最大の都市に中華街が出現!? チャイナマネーによる大規模開発計画が復活』<サイゾー>)。
ちなみにラージャパクサ元大統領は、再選を狙った14年の選挙で次々と汚職の実態が暴露され、落選している。また、中国の政府や企業から多額の賄賂を受け取り、便宜を図っていた疑惑も持ち上がっている。
スリランカのある専門家は、同空港についてフォーブス誌にこう解説している。
「この空港の計画は2~3年などという短い期間ではなく、10年、20年という長いスパンで見るべき」
とはいえ、中国の建設会社がつくった空港である。10年後、20年後にも不具合なく使えるか気になるところだ。
(文=佐久間賢三)