もし、アメリカと中国が軍事衝突をしたらどうなるか――。
世界はもはや、この事態について考えなくてはならない時を迎えている。2015年10月、アメリカは南シナ海において「航行の自由」作戦を開始した。これは、中国が領有権を主張する人工島の12海里以内をアメリカの軍艦が横断するというものだ。「人工島に関しては領有権を認めない」という国際ルールを守らない中国に対する威嚇である。
これまでの歴史を振り返ってもわかるが、アメリカが「自由」や「正義」という言葉を持ち出したとき、それは「戦争に向けて動き出す」というサインである。そこで、たとえ小規模であっても、もしアメリカと中国が軍事的な衝突を起こした場合、何が起きるのかを考えなくてはならない。
まず、アメリカも中国も核保有国であり、いわゆる大量破壊兵器を持っているという前提がある。それが、冷戦を招く要因にもなるわけだ。
例えば、中国が核を使用すれば、報復的にアメリカも核使用に踏み切り、核戦争に発展する。そうなれば地球は破滅し、勝者なき戦争になってしまう。それを両国の指導者が十分に理解しているからこそ、対立はおのずと冷戦化することになる。
現在、戦争や紛争が起きた場合、主に用いられる手段に金融制裁がある。これは、ロシアのクリミア半島編入に際して、アメリカやヨーロッパが採った手段でもある。
アメリカには、米国愛国者法と国際緊急経済権限法(IEEPA)という法律がある。これらは、「アメリカの安全保障に重大な危機をもたらす人物や国家に対して、資産や銀行口座の凍結や没収ができる」というものだ。議会の承認を得なくても、大統領令で発動できる法律である。
アメリカの金融制裁に苦しむ中国
米中が軍事衝突したら、まずアメリカは中国に対して金融制裁を科し、それを徐々に強めていくことになるだろう。中国の一部の軍幹部、その関係者、軍需系企業などの金融口座を廃止、同時に資金の移動を禁止することになる。
超大国といわれるアメリカの一番の強さは、金融支配にある。現在の世界の金融体制は、ブレトン・ウッズ体制に端を発する。これは、第二次世界大戦末期の1944年にアメリカのブレトン・ウッズで連合国通貨金融会議が開かれ、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立が決定されたものだ。
当時、世界の金の80%近くがアメリカに集中しており、アメリカは膨大な金保有国であった。その金と交換できるドルを基軸通貨とし、他国の通貨価値をドルと連動させるという仕組みで、金・ドル本位制ともいわれる。
『戦争へ突入する世界 大激変する日本経済』 中国経済の崩壊は、人民元の主要通貨入り、アメリカ利上げでどう進むのか? 難民とテロに苦しむ欧州で始まったユーロ分裂と対立の行方は? 南シナ海での米中衝突と、日本の中国・韓国包囲網による新たなアジア秩序とは? 動乱へと向かう世界のなかで日本経済に起こる大きな転換とは? 日本人が知らない世界の大変化と日本経済の今後を読み解く!