このほかにも、次のような驚きの現実が映画のなかで紹介される。
・宿題がないのに学力ナンバーワンのフィンランド
・死刑がなく、懲役刑の最長期間が21年でも再犯率は世界最低のノルウェー
・麻薬の使用は他人に迷惑をかけるわけじゃないので合法なポルトガル
・休日や退勤後に上司がスタッフに連絡をすると法律違反になるドイツ
・中絶費用が無料で、イスラム教徒のスカーフ着用は本人の判断というチュニジア
教育費と奨学金で世界最悪の日本
さて、ムーア監督はアメリカ社会の欠点を次々と指摘するが、それは日本の欠点と重なっているものが多い。日本はアメリカと違って、有給休暇が法的に制度化されているが、厚生労働省「平成27年就労条件総合調査」によると、民間企業の有給休暇取得率は47.6%である。50%を下回る状態がずっと続いている。これでは、制度化されていても、あまり意味がない。
大学の授業料の問題は深刻だ。日本の奨学金の約9割は日本学生支援機構の貸与奨学金であり、そのうち金額ベースで約7割が有利子となっている。世界的に見れば「教育ローン」と呼ぶにふさわしい日本の奨学金を借りている大学生は、卒業時には約300万円の「借金」を負わなければならない状況にある。OECD(経済協力開発機構)のデータによれば、日本は「授業料が高く、奨学金も充実していない国」で、先進国では日本だけだ。
「授業料が安く、奨学金が充実していない」国として、スペイン、イタリア、スイス、メキシコ、フランス、ベルギー。「授業料が安く、奨学金も充実している」国は、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデンなどが挙げられる。
アメリカはどうかといえば、「授業料が高いが、奨学金が充実している」国であり、オーストラリアとニュージーランドもこのグループに入る。要するに、先進国のなかで日本は最悪の教育制度ということだ。
アイスランドの男女同権も、日本には耳が痛い話だ。ILO(国際労働機関)の報告書によると、日本の女性管理職比率は11.1%で、108の国・地域別ランキングでは96位。アジアではフィリピンが47.6%で唯一のトップ10入り。中国が16.8%で85位なので、日本は中国よりも下ということになる。