7月10日、参議院議員通常選挙の投開票が行われる。安倍晋三首相は6月1日、17年4月に予定されていた消費税率10%への引き上げを2年半後の19年10月まで再延期することを表明した。それは、今回の参院選で自民党が勝利を収めるための切り札でもあった。
与野党を問わず、また国民も消費税率の引き上げ延期には概ね賛成であるため、安倍首相の公約違反こそ批判されたものの、延期したこと自体への批判はほとんど聞かれない。しかし、延期によってさまざまな影響や問題が発生することを、参院選前に確認しておきたい。
そもそも、12年に当時の政権与党だった民主党(現民進党)と自民党、公明党の3党合意により決められた「社会保障・税一体改革」では、消費税率引き上げによる増収分は全額を社会保障に使うと目的税化された。この時に消費税率を14年4月に5%から8%へ、15年10月に8%から10%に引き上げるというスケジュールが示され、同時に社会保障に対するさまざまな改革と施策が打ち出された。従って、当然のことながら消費税率の引き上げが先送りされれば、それが財源不足となり予定していた施策等に悪影響が出る。
14年11月18日、安倍首相は15年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げを1年半延期して17年4月とすると表明した。実はこの延期により、本来は消費税率が10%に引き上げられているはずだった15年10月以降から現在に至るまで、すでに社会保障ではさまざまな悪影響や問題が発生しているのだ。
例えば、政府は12年8月に「年金機能強化法」を成立させた。同法では、それまでの年金受給資格期間(年金を掛けた期間)を現行の25年から10年に短縮することを決めた。これは、将来の無年金者の発生を防止・抑制するための措置で、試算では約17万人が年金を受給できるようになると見込まれた。また、低年金者には年金生活者支援給付金という措置を設け、現金の支給を行う予定だった。
しかし、これらの措置は消費税率が10%に引き上げられることが実施条件となっていたため、引き上げ延期とともに実施が見送られることになった。それだけが要因のすべてではないだろうが、結果として低年金者や無年金者の生活が苦境に立たされ、貧困に喘ぐこととなった。現在の生活保護の対象は、「母子家庭」を抜き「老人家庭」がトップとなっている。