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子育て支援や介護業界にも影響
前回の延期で影響を受け、問題が発生したのは年金受給者だけではない。さまざまな措置が停止・縮小されたことで、問題が発生している。そして、今回の延期でも、新たな問題が発生する可能性が高い。
例えば、15年4月からスタートした新たな子ども・子育て支援制度では、毎年1兆円を超える財源が必要となり、そのうち7000億円については消費税の増収分で賄うという皮算用だった。しかし、前回の引き上げ延期により、財源は不確実なものとなった。15年度はなんとか帳尻を合わせ乗り切ったが、16年度分については、いまだに4000億円程度の財源が確保できていない状況だ。
あるいは、安倍首相が華々しく宣言した「一億総活躍社会」の実現策で、6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」では、保育士および介護人材の処遇改善が打ち出されている。今後、必要と見込まれる保育士50万人の確保に約1000億円、保育士および介護人材の処遇改善に約2000億円が必要と試算されている。しかし、これらの財源は明確にはなっていない。当然、消費税率の引き上げを延期すれば税収の増加は見込めなくなるため、新たな財源探しが必要になるだろう。
このように、消費税率の引き上げ延期は、さまざまな政策に悪影響をもたらすことは明確であり、実際に前回の延期でも悪影響が出ているにもかかわらず、それを選挙の切り札のように使い、延期により発生する可能性のある問題を説明もしないという安倍政権の姿勢は非常に問題である。きちんと説明責任を果たした上で、選挙の争点のひとつとして国民の判断を仰ぐべきであろう。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)
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