(「Thinkstock」より)
その「アベノミクス」が推し進める景気対策の中で中核的な位置を占めるのが、公共事業の復活だろう。安倍政権では、東日本大震災の教訓から防災を強く念頭にあげた公共事業を「国土強靭化計画」として打ち出している。加えて、2012年12月2日に中央自動車道の笹子トンネル天井板の落下事故により、老朽化したインフラの補修・整備が重要なテーマとなった。
しかし、老朽化したインフラの補修・整備が進められても、簡単にその危険性が取り除かれるとは思えない。例えば、日本の高速道路は、たやすく補修が効くほど軽度の病状ではなく、危篤患者並みの状態に陥っている。
日本の高速道路は、1962年12月20日に首都高速1号線が東京の京橋―芝浦間に開通したのが最初。首都高速道路会社の「首都高速道路構造物の大規模更新のあり方に関する調査研究委員会」によると、すでに総延長約301.3キロのうち40年を超える構造物が約3割、30年以上が約5割を占めている(阪神高速も、総延長245.7キロのうち約5割が30年以上経過している)。
一方、東日本、中日本、西日本の高速道路会社(NEXCO3社)による「高速道路資産の長期保全及び更新のあり方に関する技術検討委員会」の資料によると、高速道路開通からの経過年数が30年を超えている割合は、NEXCO3社の高速自動車道の総延長7832.5キロのうち約4割となっている。
高速道路は一般道に比べ、橋梁やトンネル等の構造物が多く、その比率は首都高速や阪神高速では9割、NEXCO3社の高速自動車道では約25%となっている。これらの構造物のうち、補修が必要とされる損傷件数は首都高速で約10万件(1キロ当たり約300件)あり、そのうち40年以上を経過している都心環状線では約9000件(同約600件)、阪神高速で約4万件、NEXCO3社で約56万件となっている。
こうした高速道路損傷の大きな要因となっているのが、大型車両の通行量が多いことが挙げられる。その重量により、道路の傷みが激しくなっているのだ。大型車両の通行量は、NEXCO3社の高速自動車道では一般道の10倍以上、首都高速では都内道路の5倍以上となっている。さらに、法律違反となる過積載などの重量違反車両は、首都高速や阪神高速では合計で約70万台あると推計されている。
NEXCO3社の高速自動車道では、橋梁1万5748橋のうち、早急に補修を行う必要がある橋梁は11%に当たる1714橋もある。30年以上を経過した橋で、早急に補修を行う必要の発生率が高くなるという。
また、山などを切り開いて道路を通した場合に、斜面などに打ち込み、のり面を支えるアンカーは累計で12万本以上あるが、劣化が顕在化しているアンカーが数多くあり、特に、永久構造物として必要な防食に関する性能基準が制定される1988年以前のものが6万2000本もあり、緊急の補修が必要だと指摘されている。